【2025年版】建築パース制作を効率化するAIツール14選【無料から商用対応まで】
- KIMURA Tetsuya
- 7 日前
- 読了時間: 12分
更新日:1 日前

AI技術の進化により、建築パース制作の在り方が着実に変わりつつあります。これまで設計者やCG制作者の手作業に依存していたレンダリング、モデリング、テクスチャ作成、プレゼン資料の準備といった各工程は、AIの導入によって一部自動化・効率化が可能になっています。
ただし、「AIだけで建築パースが完成する」といった期待には現時点で限界があります。実際には、初期イメージの生成、コンセプト検討、素材作成、表現の補助といった用途での利用が中心で、専門ソフトとの併用が前提です。本記事では、そうした前提を踏まえながら、2025年時点で利用可能な“実用レベル”のAIツール14選を、機能・対応範囲・商用可否なども含めて紹介します。
「無料で試せるものは?」
「商用利用できるか?」
「建築CGにどこまで使えるのか?」
といった疑問を持つ方に向け、現場で役立つ具体的なAI活用ツールの選定と、その実力を冷静に評価します。建築ビジュアライゼーションの可能性を広げる一歩として、ぜひ参考にしてください。
建築パース制作におけるAIツールの4カテゴリと主な用途

建築パースの制作工程は多岐にわたりますが、AIツールはそのすべてを一括で担うものではありません。
用途に応じて最適なツールを選ぶことが重要です。以下に、主な工程別に分類したAIツールのカテゴリと対応例をまとめました。
カテゴリ | 主な役割 | AIツール |
① 構想・アイデア生成 | 初期デザインのビジュアル化、建築コンセプトの提案 | |
② レンダリング支援 | 光・質感の調整、高速レンダリング、リアルな仕上がり | |
③ モデリング・素材生成 | テクスチャやPBR素材の作成、室内配置、3D化支援 | |
④ プレゼン資料作成 | クライアント向け説明資料、動画・VR、提案支援 |
① 構想・アイデア生成に役立つAIツール

初期の設計段階では、完成形にこだわらず「雰囲気」「方向性」「素材感」「構図」などを短時間で視覚化できるツールが求められます。ここでは、テキストや参考画像から建築コンセプトパースやインテリア案を生成できるツールを中心に紹介します。
Midjourney|建築パースのコンセプト案を高速に画像生成
Midjourneyは、テキストプロンプトから高精度なビジュアルを生成できる画像生成AIです。建築的な正確性には欠けるものの、雰囲気重視のコンセプトパース制作や空間演出の方向性を素早く共有したい場面で活用されており、感度の高いクライアントとの打ち合わせやプレゼンにも向いています。
無料利用:なし(2025年5月時点)
商用利用:有料プラン(月額10ドル〜)加入で可能
Stable Diffusion|無料で使える画像生成AIで建築イメージを可視化
Stable Diffusionはオープンソースの画像生成AIで、Webサービスやローカル環境で利用できる柔軟さが魅力です。建築構図や素材提案といった用途で複数パターンを出し分けるのに向いており、アイデアスケッチの一環として利用されるケースが増えています。
無料利用:あり(Webサービスやローカル利用で対応)
商用利用:可能(年商100万ドル未満の個人・法人に限る、2025年5月時点)

Stable Diffusionの指示画面(Prompt入力):テキストで指示を入力するだけで、建築パース風のイメージを自動生成できます。ここでは「modern Japanese house, open-plan living room, natural wood flooring, concrete walls, large windows, minimalist design, soft natural lighting, concept render, architectural visualization」(日本語の指示でもOK)といった構成例を使用。
生成された画像:無料プランでも2枚のイメージが生成されます。右下のロゴ入り画像は7日間ダウンロード可能です(ロゴなしは有料プランが必要)。
アップスケール機能について:作成した画像は、最大4K相当まで画質を上げることも可能(有料プラン限定機能)。

Adobe Firefly|Adobe連携の画像生成AIで空間演出素材を作成

Adobe Fireflyは、PhotoshopやIllustratorといったAdobe製品と連携して使用できる画像生成AIです。建築に特化しているわけではないものの、壁紙、家具、照明などの空間演出パーツの表現には十分に活用でき、既存の素材と組み合わせて活用することで、提案資料の質を引き上げることができます。
無料利用:あり(Adobe IDで一部機能にアクセス可能)
商用利用:可能(Adobe Stockの利用規約に準拠、2025年5月時点)
Adobe Fireflyでは、用途に応じて複数の画像生成モデルを選ぶことができます。
Image 4 Ultra:より高精細でリアルな出力に対応しており、フォトリアルなシーンや建築パースなど、ディテールにこだわりたい用途に適しています。
Image 4:汎用性が高く、スピーディに安定した画像を生成できる基本モデルで、日常的なビジュアル制作に向いています。
Image 3:はプロンプトの解釈に優れ、スタイルや構成の再現力が高く、アイデア出しやコンセプトスケッチに便利です。
また、Adobe FireflyではGoogleの「Imagen 3」やOpenAIの「GPT Image」といった、外部モデルも選択可能です。Adobe独自モデルとは異なる表現傾向があり、生成スタイルを比較したい場合や、より幅広いビジュアル表現を試したいときに役立ちます。
Fireflyの生成塗りつぶし機能を使えば、既存の室内写真に自然にソファや家具を追加することができます。ここでは“グレーのモダンソファ+木製ローテーブル”を追加しています。

既存の画像を元に、「カラーとトーン」を変更するだけで、既存の室内写真が印象の異なる室内イメージとなって表示されます。

DALL·E 3|ChatGPT搭載の画像生成AIでインテリアを自動提案
DALL·E 3は、OpenAIが提供するテキストから画像を生成するAIで、室内の構図や家具の配置、雰囲気のあるインテリアイメージの出力が得意です。精緻な建築パースではないものの、提案初期の方向性確認や発想の拡張には有効です。
無料利用:ChatGPT Plus(20ドル/月)プラン内で利用可能
商用利用:可能(OpenAIの利用規約に準拠、2025年5月時点)
例えば、ChatGPT上で「木の床と白いソファのあるモダンなリビング。大きな窓から光が入る。建築パース風の構図。」
と入力するだけで、DALL·E 3がそれに近い室内イメージを自動生成してくれます。操作は非常にシンプルで、複雑なスキルやソフトは不要です。
DALL·E 3の画像生成は、ChatGPTの使用モデル(GPT-4o、GPT-4-turboなど)に関係なく、すべて同じ画像生成モデルで処理されます。使用するモデルによって画質や生成内容が変わることはありません。

Ideogram|建築様式・素材感の再現に優れた画像生成AI
Ideogramは、近年登場した新興の画像生成AIで、建築様式の再現や素材感(レンガ、木材など)の表現に特化しています。生成品質にややムラがあるため、大量出力して使えるものを選別するような使い方が適しています。
無料利用:あり
商用利用:不明(利用規約の明記なし、確認推奨)
② レンダリング支援に役立つAIツール

リアルな建築ビジュアライゼーションを行う上で、レンダリングは重要な工程です。AIによって光や質感の調整が自動化され、作業効率が大きく向上するだけでなく、非エンジニアでも高品質な出力が可能になりつつあります。
D5 Render|リアルタイム&AI搭載の建築レンダリングソフト
D5 Renderは、リアルタイムレンダリングに対応したビジュアライゼーションツールで、NVIDIA RTXに最適化されたレイトレーシング技術を搭載しています。AIノイズリダクションや光の自動調整機能により、短時間で高品質なパース表現が可能です。
無料利用:あり(Community版)
商用利用:可能(Pro版 月額15ドル〜、2025年5月時点)
Lumion|自然光・環境表現に強い建築ビジュアライゼーション定番ツール

Lumionは、建築パース専用のレンダリングソフトとして定評があり、最新バージョンではAIによるライティング調整機能も搭載されています。特に自然光表現や環境の描写に強く、動画レンダリングにも対応します。
無料利用:あり(14日間トライアル)
商用利用:可能(有料ライセンス 年額499ドル〜、2025年5月時点)
Blender(+AI Denoise)|完全無料の3Dレンダリング+AIノイズ除去対応

オープンソースの3D制作ソフトBlenderは、AI Denoiser(Intel OIDNやNVIDIA OptiX)を組み込むことで、高速かつ高品質なレンダリングが可能になります。完全無料で商用利用もでき、カスタマイズ性が非常に高いのが特徴です。
無料利用:あり
商用利用:可能(完全無料、2025年5月時点)
Live Home 3D|住宅パース制作と建築設計を一括で行える3Dソフト

Live Home 3Dは、設計からレンダリングまでを一貫して行えるソフトで、インテリアや住宅のパース作成に強みがあります。AIによるカメラ視点の最適化やライティング補助が搭載されており、初心者にも扱いやすい設計です。
無料利用:あり(機能制限付き)
商用利用:可能(Pro版 49.99ドル〜、2025年5月時点)
③ モデリング・素材生成に役立つAIツール

建築パースのクオリティを左右するのがマテリアルや質感の精度です。AIを活用することで、手作業では時間のかかる素材生成やモデルの自動構築を効率化できます。
Archicad AI|BIMデータを自動モデリングする建築設計AIツール

Graphisoftが開発するBIMソフト「Archicad」に搭載されたAI機能は、設計意図に基づいた自動モデリングや構造提案に対応しています。設計支援としてのAI活用では最も本格的な部類に入ります。
無料利用:あり(30日間トライアル)
商用利用:可能(有料ライセンス 年額約1,000ドル〜、2025年5月時点)
Substance 3D|リアルな建築素材を作成できるPBRマテリアル生成AI

Substance 3Dは、PBRマテリアルの自動生成に特化したツールで、画像1枚からリアルな質感マテリアルを作成できます。建材や質感表現をより高度にコントロールしたいパース制作者におすすめです。
無料利用:あり(学生・教育機関向け)
商用利用:可能(Creative Cloud連携 月額20ドル〜、2025年5月時点)
Polycam Texture Generator|スマホで撮ってPBRテクスチャを自動生成

Polycam Texture GeneratorはLiDARベースのスキャンアプリで、Texture Generator機能によりAIが建築素材に適したテクスチャを自動生成します。スマホで撮影した素材からすぐにPBR化できるのが魅力です。
無料利用:あり(一部制限付き)
商用利用:可能(Pro版 月額12ドル〜、2025年5月時点)
Sweet Home 3D|無料で使える住宅モデリング・パース作成ソフト

Sweet Home 3Dは、フリーで使える住宅設計ソフトで、簡易的な3Dモデリングからパース生成まで一貫して対応。ライブラリ拡張と併せてAI素材生成の連携も検討されています。
無料利用:あり
商用利用:可能(GNU GPLライセンス、2025年5月時点)
④ プレゼン資料作成に役立つAIツール

提案フェーズでは、建築パースを視覚的に伝える手段としてプレゼン資料の質が問われます。AIを活用することで、ナレーション付き動画やインタラクティブな3D表現が手軽に実現できます。
Synthesia|ナレーション付き建築プレゼン動画をAIで自動生成

Synthesiaは、AIアバターによるナレーション付きプレゼン動画を自動生成できるサービスです。テキスト入力のみで複数言語・複数スタイルのプレゼンが作成でき、国際案件やクライアント説明資料に有効です。
無料利用:あり(月3分まで)
商用利用:可能(Personalプラン 月額22.50ドル〜、2025年5月時点)
Planner 5D|建築図面から3Dパースを自動作成できるクラウド型ツール

Planner 5Dは、住宅やインテリアのパース作成に特化したWebサービスで、図面から自動で3D化・プレゼン用資料の出力が可能です。テンプレート活用や直感的UIが強みです。
無料利用:あり(機能制限付き)
商用利用:可能(Proプラン 月額9.99ドル〜、2025年5月時点)
RoomSketcher|間取り作成+建築パース+プレゼン資料を1つで対応

RoomSketcherは、間取り作成から3D表示・プレゼン資料まで対応するオールインワンツールです。AIによる視点補正や寸法調整にも対応しています。
無料利用:あり(Viewer機能)
商用利用:可能(Pro版 年額99ドル〜、2025年5月時点)
Homestyler|住宅・インテリアのVRプレゼンに強い建築可視化ツール

Homestylerは、ブラウザベースで利用できる住宅・インテリア向けの3D設計ツールです。VRやパノラマ表示にも対応しており、操作性のわかりやすさとビジュアル重視の出力が特徴です。特別なソフトのインストールは不要で、Googleアカウントがあればすぐに利用開始できます。
無料利用:あり
商用利用:可能(Proプラン 月額19.90ドル〜、2025年5月時点)
無料プランでも基本的な間取り作成から3D表示まで対応可能で、初期提案やプレゼン資料の作成にも十分活用できます。間取りは自動生成のほか、壁を手動で描くことも可能で、壁を引くだけで床が自動生成されるなど、直感的な設計支援も備わっています。

「どれを使えばいい?」建築パースAIツールの選定ポイント

どのAIツールを選ぶかで、作業効率や仕上がりの質は大きく変わります。目的と工程に合ったものを選ばないと、かえって非効率になったり、商用利用時にトラブルになったりするリスクもあります。導入時に失敗しないためには、以下の3つのポイントを意識することが重要です。
1.自分のフェーズに合っているか?
建築パースは、アイデア出し・レンダリング・仕上げ・プレゼンという複数の工程で成り立っています。すべてを1つのAIで完結させようとせず、構想段階ならMidjourney、仕上げ段階ならD5 Renderというように、役割分担を意識して選ぶと効果的です。
2.商用利用・ライセンス条件を確認しているか?
無料で使えるからといって、商用利用が許可されているとは限りません。有料プランでのみ商用可とされていたり、生成画像の再配布に制限があるツールもあります。公開用途のある案件では、事前に公式ライセンス条件を必ず確認しましょう。
3.実用に耐える操作性と出力品質か?
見栄えのよさだけでなく、「操作が直感的か」「作業スピードに影響しないか」「安定して使えるか」といった点も重要です。高機能すぎて逆に手間が増えるツールもあるため、自分のスキルや作業スタイルに合うかどうかも考慮に入れて選ぶと失敗が少なくなります。
まとめ

AIツールは、建築パース制作の各工程において着実に活用範囲を広げています。ただし、現時点では「完全自動化」や「即戦力の完成図」としての活用には限界があり、設計者やCG制作者の補助として使うことが前提です。
本記事で紹介した14のAIツールは、構想、レンダリング、モデリング、プレゼンというそれぞれの場面で、目的に応じて選定すれば十分に実用レベルに達しています。
今後のAI精度向上により、さらにリアルで精緻なパースが短時間で生成できる時代が到来する可能性もあります。現在はまだ過渡期とはいえ、AIを正しく選び、的確に活用できるかどうかが、建築ビジュアライゼーションの質を大きく左右すると言えるでしょう。