Nukeとは？｜機能を詳細解説

KIMURA Tetsuya
7月12日
読了時間: 9分

デジタル合成の世界で業界標準とされる Nuke は、Adobe After Effects よりも大規模で高度な映像制作に対応できる、ノードベースのプロ用合成ソフトウェアです。Foundry社の公式情報によれば、200 種類以上のノードと、2D・3D 合成、深度情報を扱える ディープコンポジット 機能を備えており、商業映画・テレビのポストプロダクション現場で幅広く活用されています。

本記事では、映像制作の現場で信頼される Nuke の特長や使い方、商用版と非商用版（Non-commercial）との違い、そして 学習や実務に役立つポイント にまで踏み込んで解説します。無償版の活用法も含めて、Nuke をはじめて触れる方でも理解しやすい構成になっています。

Nukeとは？

引用：Nuke公式サイトより

Nuke は、Foundry社が提供するプロ向けのノードベース式デジタル合成ソフトウェアです。映像制作の現場、特に映画・テレビ・CMなどのポストプロダクションにおいて、VFX制作や高度な合成作業の基盤として広く活用されています。

ノードベース合成の特長

Nukeは、処理ごとに“ノード”という単位に分け、その接続によって合成処理を視覚的に組み立てる方式を採用しています。これにより、何段階もの合成過程を直感的に把握・編集でき、部分的な修正も迅速に行える柔軟なワークフローが実現されています。

映像制作プロジェクトへの対応力

Nukeは、3Dカメラトラッキング、マッチムーブ、ライティング調整、ディープコンポジットによる奥行き情報を含む合成処理に対応しており、非常に精度の高い映像制作が可能です。多くの国際的スタジオで業界標準として使用されている実績があります。

幅広い機能セット

カラー補正・グレーディングや2D／3D合成
ディープコンポジット（深度情報付き合成）
Python / C++スクリプト拡張、およびOpenFX／BlinkScriptのサポート
HDから4K以上の映像、大規模プロジェクトの処理も可能

Nukeはこれらの特徴を活かし、映像制作の現場で品質と効率を兼ね備えた合成を実現できる強力なツールとして、多くのプロフェッショナルに支持されています。

NukeとNukeXの違いは？

Nuke には標準版のNukeと、機能拡張版のNukeXが用意されています。両者は同じ基盤ソフトであり、同じプロジェクトファイルを共有でき、用途に応じた選択が可能です。

NukeX は、Nuke の基本機能に加えて、より高度な VFX 制作用のツールが統合されています。主な追加機能として、3D カメラトラッキング、ジオメトリキャッシュ、レンズディストーション補正、スマートベクター、プラナー・ポイントクラウドジェネレーター、粒子システム（3D パーティクル）などが含まれます。

プロジェクトの規模や必要な機能に応じて、標準的な合成作業では Nuke、より複雑なトラッキングや高精度合成が求められる場面では NukeX を活用することで、効率的で柔軟な制作ワークフローを実現できます。

Nuke Studioとの違い

Nuke Studioは、Nuke / NukeX の合成機能に加えて、タイムラインベースの編集・レビュー機能が統合された上位エディションです。NukeX の高度な合成ツール群に加えて、ショット管理・マルチショット編集・プレイバック・レビュー・バージョン管理といった機能を一つの環境で提供します。

Nuke Studio の主な特長は次の通りです。

タイムラインベースのマルチショット編集・管理機能を搭載
ショット間のバージョン比較やレビュー機能を統合
チームでの大規模プロジェクトにおけるシーケンス管理や最終確認作業を効率化

一方、Nuke / NukeX は、合成作業そのものに特化したツールであり、映像編集やシーケンス管理機能は搭載されていません。プロジェクトの規模や工程によって、Nuke / NukeX / Nuke Studio を使い分けることで、作業効率と品質を最大化できます。

Nukeのライセンスと料金体系

Nuke は商用利用を前提とした有償ライセンス と、学習・評価用の無償ライセンス（Nuke Non-commercial） の 2 種類の提供形態があります。

商用ライセンス（有償）

商用ライセンスは、映画・テレビ・広告などの商用プロジェクトでの利用を前提としており、Nuke / NukeX / Nuke Studio の各エディションがあります。ライセンスはサブスクリプション形式で提供され、購入時には以下が含まれます。

商用利用権
全機能の利用（高度な合成、3D合成、ディープコンポジティング、パーティクル、トラッキングなど）
公式サポートおよびソフトウェアの最新バージョンへのアップデート

参考価格（2025年時点・米ドル／日本円換算は目安）

エディション	年間サブスクリプション価格（USD）	日本円目安（1USD=110円換算）
Nuke	$3,299	約 362,000 円
NukeX	$4,499	約 494,000 円
Nuke Studio	$5,499	約 674,000 円

※ 永続ライセンス（買い切り型）は新規購入終了。既存ユーザー向けのサポートのみ継続中です。

無償ライセンス（Nuke Non-commercial）

Nuke Non-commercial は、個人の学習や非商用プロジェクト向けに無料で提供されています。次のような制限があります。

商用利用は禁止
出力解像度：最大 1920×1080（HD）
一部フォーマット（ProRes、DNxHD、OpenEXR 書き出し等）やプラグイン利用不可
Python API やスクリプト暗号化など高度機能の制限
サポート・アップデート対象外

無償版は、学習や操作感の確認、評価用途に最適です。

Nukeの特徴

Nuke は、その卓越したデジタル合成機能により、映画、テレビ、CM など多様な映像制作プロジェクトで広く採用されています。以下に、Nuke の主な特徴をまとめます。。

ノードベースの合成アプローチ

Nuke はノードベースのワークフローを採用し、各処理をノードとして視覚化することで、複雑な合成プロセスを直感的かつ柔軟に操作できます。ノードを連結して映像の合成、カラー補正、エフェクトの適用などを効率的に行うことが可能です。

3D合成と統合機能

Nuke は 3D カメラトラッキング、ライト、カメラ、ジオメトリデータのインポート・操作機能を持ち、実写映像に CG 要素を自然に統合できます。3D パーティクルやビジュアライゼーションも可能です。

カラーグレーディングと補正機能

高度なカラーグレーディング・補正ツールが統合されており、カラーコレクション、トーン調整、マルチパス合成による質感・雰囲気の細やかな調整が可能です。

ディープコンポジティング

ピクセルごとに深度情報を持たせるディープコンポジティング機能を備え、CG と実写素材を奥行き情報を活かしてシームレスに合成できます。これにより、複雑なレイヤー構造を持つシーンでも精密な調整が可能です。

拡張性とプラグインサポート

Python スクリプトや C++ ベースの BlinkScript による拡張、サードパーティ製プラグインの利用により、カスタム機能の追加やワークフローの最適化が行えます。

Nuke はこれらの特徴を活かし、ハイエンドな映像制作において高品質なデジタル合成を実現する強力なツールとして評価されています。

Nukeでできること

Nuke は、高度なデジタル合成・VFX 制作を中心とした多機能なソフトウェアです。以下は、Nuke を使って可能な代表的な作業とその特長です。

レンダリング

Nuke はノードベースのワークフローに基づく高品質なコンポジット出力（レンダリング）機能を持ち、映画やCMなどで用いるリアルな VFX の最終合成画像を効率よく生成できます。深度情報を活用した調整やマルチパスレンダリングの合成にも対応しており、柔軟な調整が可能です。

3D合成（3Dシーンの統合）

Nuke は基本的な 3D シーン統合機能（カメラ・ライト・3D ジオメトリの読み込みと操作）を備えており、実写映像に CG 要素を自然に合成する作業を強力にサポートします。ただし、専用の 3D モデリング機能はなく、モデリング自体は他の 3D ソフトで行い、その結果をインポートして使用するのが一般的です。

VFX（視覚効果）

Nuke は VFX 制作において業界標準のツールとされ、キーイング、ロトスコープ、トラッキング、カラーグレーディング、マッチムーブなど、幅広い視覚効果の合成に対応しています。ノードベースの設計により、複雑な処理の調整やエフェクトの適用が柔軟かつ視覚的に行えます。

アニメーション（ノードパラメータアニメーション）

Nuke はキャラクターアニメーションソフトではありませんが、ノードの各種パラメータ（位置、スケール、エフェクト強度など）にキーフレームを打ってアニメーション制御が可能です。これにより、ロゴの動きや簡易的なエフェクトの時間変化を作り出すことができます。

Nukeのメリット

Nuke は、プロフェッショナル向けのデジタル合成ソフトウェアとして、映像制作の現場で数多くのメリットを提供しています。

まず、ノードベースのアプローチにより、複雑な処理を視覚的に整理でき、作業の途中で柔軟に調整や再構築を行うことが可能です。これにより、変更や修正が必要な場面でも効率的に対応できます。

また、Nuke は 2D・3D の合成機能を統合しており、カメラやライティング、ジオメトリデータを組み合わせた高度な合成が一元的に行えます。これにより、リアルな VFX 制作や高度な合成作業を効率的に進めることができます。

さらに、映画やテレビ、CM といった多様なジャンルの制作現場で長年採用されており、業界標準の合成ツールとして信頼されています。

Nukeのデメリット

Nuke は非常に高機能で柔軟なデジタル合成ソフトウェアですが、いくつか注意すべきデメリットもあります。

まず、ノードベースのワークフローや高度な機能が中心となるため、初心者にとっては学習コストが高く、操作を習得するまでに時間がかかることが少なくありません。特に、映像合成ソフトに慣れていない方にとっては独特の操作体系がハードルになることがあります。

また、商用ライセンスの価格は他の合成ソフトと比べて高額で、個人や小規模スタジオにとっては導入の際に予算上の課題となることがあります。

さらに、Nukeは高解像度映像や複雑なVFX処理に対応できる分、高いハードウェア性能が求められます。CPU・GPU・メモリなどが不足していると、動作が重くなり、レンダリングに時間がかかることがあります。加えて、大規模プロジェクトではプロジェクトファイルの容量や管理工数が増大し、効率的なデータ管理が必要となる点も考慮すべきです。

まとめ

Nukeは、映画、テレビ、CMなどの映像制作で広く採用されている、プロフェッショナル向けの高度なデジタル合成ソフトです。ノードベースの柔軟なワークフロー、高度な3D合成機能、カラーグレーディングやディープコンポジティングなど多彩なツールを備え、VFX制作の現場で高い評価を得ています。

Nukeには商用向けの有償版と、学習・個人用途に適した無償版（Nuke Non-commercial）があり、用途や予算に応じて選べるのも特徴です。まずは無償版で基本操作を試し、スキルを磨きながら、必要に応じて商用版や上位エディションの導入を検討するのがおすすめです。Nukeの特性を理解し、目的に合った形で活用することが、映像制作のクオリティ向上につながるでしょう。