建築向け画像生成AIを比較|Midjourney・Firefly・DALL·E 3の違いと選び方【2025年最新版】
- KIMURA Tetsuya
- 4 日前
- 読了時間: 10分

AI画像生成の進化によって、建築パース制作にも新しい選択肢が登場しています。これまで専門的な3DCGソフトが中心だった建築パースの世界においても、文章で指示を入力するだけでイメージパースを自動生成できるAIツールが注目されています。
中でも代表的なのが「Midjourney」「Adobe Firefly」「DALL·E 3」の3つです。いずれも高精度な画像生成が可能ですが、それぞれ得意分野や使い方、商用利用の条件が異なるため、目的によって適したツールは変わってきます。
本記事では、2025年最新版としてこれら3つの画像生成AIを建築パース用途に絞って徹底比較します。各ツールの特徴、向き・不向き、商用利用の注意点までわかりやすく解説しますので、これからAIを活用して建築パースを作成したい方はぜひ参考にしてください。
なぜ今「画像生成AI」が建築パースで注目されているのか?

ここ数年で、建築設計や空間デザインの現場では画像生成AIの導入が急速に進んでいます。背景には、いくつかの明確な理由があります。
AIの進化と商用環境の整備
かつては一部の研究者やクリエイターの領域だった画像生成AIですが、2023年以降、商用サービスとしての成熟が進み、誰でも扱えるツールが続々と登場しました。MidjourneyやAdobe Firefly、DALL·E 3などは、特別なスキルがなくても高品質な画像を生成でき、専門職以外の人でも建築ビジュアルを扱える時代が到来しています。
初期提案スピードの短縮ニーズ
設計や内装のプロセスでは、「まずはイメージを見せてほしい」という要望が非常に多くなっています。従来は3DCGソフトや手描きスケッチで時間と手間をかけていましたが、画像生成AIを使えば短時間で複数の案を提示できるため、初期段階の意思決定が格段に早まります。
SNS・マーケティング用途の拡大
建築や店舗デザインのプロジェクトでは、SNS向けビジュアルやクライアントプレゼンの「絵作り」が重視されるようになっています。ここでもAIツールの柔軟性が役立ち、実制作前のプロトタイプやイメージ共有ツールとして、画像生成AIが注目されています。
このように、建築分野での画像生成AIは単なる流行ではなく、実務レベルでの必要性に応える技術として浸透しはじめています。
3大画像生成AIの特徴と違い【Midjourney / Firefly / DALL·E 3】
現在、建築ビジュアル制作でよく使われている画像生成AIには、Midjourney(ミッドジャーニー)、Adobe Firefly(ファイアフライ)、DALL·E 3(ダリ・スリー)の3つがあります。
これらのツールはそれぞれに強み・得意分野・商用条件が異なるため、目的や用途に応じた選び方が重要です。
まずは、主なスペックや対応状況を比較表で見てみましょう。
Midjourney・Firefly・DALL·E 3|比較一覧表(2025年時点)
項目 | Midjourney | Adobe Firefly | DALL·E 3 |
提供元 | Midjourney Inc. | Adobe | OpenAI |
操作方法 | Discord経由(チャット形式) | Web UI(Creative Cloud) | ChatGPT内またはWeb UI |
学習データ | 非公開 | Adobe Stockベース | 一部公開(OpenAI規定に準拠) |
商用利用可否 | 可(有料プランのみ) | 可(Adobeアカウント必須) | 可(Proプランのみ) |
画風・特徴 | 芸術性・抽象表現に強み | 写実的で自然な描写 | 指定精度と自然言語理解が強い |
使いやすさ | △(初心者にはやや難しい) | ◎(直感的) | ○(ChatGPTに慣れが必要) |
日本語対応 | △(英語が基本) | ◎(日本語プロンプト可) | ◎(日本語プロンプト可) |
価格(2025年時点) | 月10ドル〜(キャンペーン中は8ドル〜) | Creative Cloudプランに含まれる | ChatGPT Pro(月20ドル〜) |
Midjourney|芸術的表現に特化したイメージ生成AI
Midjourneyは、ディスコード上でプロンプトを入力して画像を生成するスタイルのAIツールです。最大の特徴は、アート性の高い構図や雰囲気のあるビジュアルを得意とする点です。
ただし、操作はすべて英語で、UIも一般的なツールとは異なるため、初心者にはややハードルが高いと感じるかもしれません。建築パースのようなリアリティ重視の用途というよりも、コンセプトスケッチや雰囲気の演出に向いています。
Adobe Firefly|商用利用も安心のAdobe公式AI
FireflyはAdobeが提供する画像生成AIで、Adobe Stock由来の安全な学習データを使用しているのが最大の特徴です。Creative Cloudの一部として利用できるため、既にAdobe製品を使っている人には導入しやすく、商用利用も明確にOKとなっています。
描写は比較的リアル寄りで、プレゼン資料や企画書などにそのまま使えるレベルのビジュアルが得られやすいのも魅力です。
例えば、モダンなレストランの内観パースを作成したい場合、以下のようなプロンプトを入力してみます。
Modern luxury restaurant interior, elegant curved ceiling design with gold brass accents, glossy marble counters, U-shaped sushi bar layout, light green onyx countertop, soft ambient lighting, high-end contemporary design, pastel color palette, art deco influence, photorealistic, ultra-detailed, wide angle view, no people
すると、画面に4枚の画像が自動生成されます。さらに「生成」をクリックすれば、ディテールの異なる新たな4枚が追加されます。

気に入った画像はそのままダウンロードして利用できますし、「Photoshop Web版で開く」を選択すれば、Photoshop Web版が起動し、より細かな編集や仕上げが可能になります。


DALL·E 3|ChatGPTとの連携で自然言語から画像生成
OpenAIが提供するDALL·E 3は、ChatGPT Proの中でそのまま使える最新世代の画像生成AIです。日本語でのプロンプトにも高精度に対応し「言葉で伝えた内容をそのまま絵にする」という強みがあります。
操作の難易度は低めで、自然言語でのやりとりに慣れている人には非常に使いやすい設計です。建築分野でも、案出しや空間イメージのビジュアル化に向いています。
建築パース制作におけるAIツールの選び方
画像生成AIは便利な反面、ツールごとに得意・不得意があり、すべての用途に万能とは限りません。ここでは、建築パース制作における目的別・視点別のAIツールの選び方を整理しておきます。
用途 | 向いているAIツール | 理由・特性 |
外観パース | Firefly / DALL·E 3 | 写実性が高く、実物に近い表現がしやすい |
内観イメージ(家具・雰囲気重視) | Midjourney | 雰囲気・トーン・マテリアル感の表現に強い |
空間のコンセプト提案 | DALL·E 3 / Midjourney | 抽象的な要素の構成に柔軟に対応 |
SNS用の雰囲気画像 | Midjourney | アート寄りでSNS映えするビジュアルに特化 |
クライアントへの実施設計イメージ | Firefly | 商用利用可能で安心+現実的な構成 |
精度重視か?表現重視か?目的に応じて選ぶ
精度・リアリティ重視 → Firefly / DALL·E 3 → 実際の設計に近い形で再現したい場合に最適
世界観・印象重視 → Midjourney → 抽象的で感性的な提案、空気感の演出に強み
建築プロジェクトでは、「技術的な正確さ」よりも「感覚的な魅力」が評価される場面も多いため、用途に応じた“割り切り”が選定のポイントです。
商用利用・著作権リスクの確認は必須
どのAIツールも商用利用可能なプランが存在しますが、注意点もあります。
ツール | 商用利用可否 | 注意点 |
Midjourney | 有料プランで可 | フリー利用では禁止。生成物の著作権は曖昧な部分もあり |
Firefly | 可(Adobe規定に準拠) | Adobe Stockベースのため、比較的安全だが利用規約の確認は必須 |
DALL·E 3 | ChatGPT Proで可 | 著作権は生成者に帰属。だが内容によっては注意が必要 |
設計事務所やクライアントワークでの利用時は、ライセンス条項の確認を怠らないようにしましょう。
建築実務での活用事例とプロンプト活用のコツ

建築ビジュアルを高い精度で表現するためには、AIへの「指示文(プロンプト)」が重要になります。同じツールを使っても、入力するプロンプト次第で出力される画像のクオリティや方向性は大きく変わります。
ここでは、実務で使いやすいプロンプト例と、生成画像を人の目に耐える品質に仕上げるためのコツをご紹介します。
設計初期のイメージ共有にAIを使う方法
建築プロジェクトの初期段階では、まだ図面も仕様も固まっていない中で、空間のイメージを共有する必要があります。
その際にAIを使って生成した画像を参考にすることで、
「こういう雰囲気で進めたい」
「この照明の感じが好み」
「この素材感が合いそう」といった抽象的なイメージをビジュアルで共有することが可能になります。
特にMidjourneyは、コンセプトや空間のトーンを伝えるのに最適です。
使えるプロンプト例と生成画像のコントロール法
精度の高い画像を得るには、プロンプト(指示文)の工夫が不可欠です。
例1:内観提案に向いたプロンプト(Midjourney向け)
modern japanese living room with wood and concrete, large windows, natural light, warm tones --ar 16:9 --v 5
modern japanese living room:スタイルの指定(和モダン)
wood and concrete:素材の組み合わせ
large windows / natural light / warm tones:空間の雰囲気
--ar 16:9:アスペクト比(横長でプレゼン資料に向く)
--v 5:Midjourneyのバージョン指定
例2:外観提案に向いたプロンプト(Firefly / DALL·E向け)
modern two-story office building, white concrete and glass facade, urban background, photorealistic, daytime
このプロンプトは、リアルな都市型オフィスビルの外観パースを生成することを目的としたものです。要素ごとの意味は以下の通りです。
modern two-story office building:モダンな2階建てのオフィスビルを指定
white concrete and glass facade:白いコンクリートとガラスを使った外観(素材表現)
urban background:都市部の背景(環境設定)
photorealistic:写真のようにリアルな質感を指示
このように構成することで、設計提案書やプレゼン資料で使いやすい写実的な外観ビジュアルを、数十秒で得ることができます。

また、要素の一部を差し替えることで、他の条件にも柔軟に対応できます。
応用プロンプトの例1:sunset version(夕景にしたい場合)
modern office building, glass facade, sunset lighting, photorealistic

応用プロンプトの例2:郊外の商業施設風にしたい場合
suburban shopping mall with parking lot, brick and glass facade, sunny weather
このように、素材・光・背景・時間帯を組み合わせて調整することで、目的に応じた多彩な外観イメージが得られます。

プロンプトの工夫ポイント
スタイル(modern / traditional)
素材(wood / glass / concrete)
光の状態(natural light / sunset / night)
アスペクト比(--ar 16:9)
バージョン指定(Midjourneyでは --v 5 など)
プロンプトは英語が基本ですが、日本語でもある程度対応するツール(特にDALL·E 3)もあります。
人の目に耐える品質にするための工夫
AI生成画像はそのまま使うと、手や文字など細部に違和感が残ることがあるため、以下の工夫をおすすめします。
あくまで“下絵”や“たたき台”として使う
画像編集ソフトで一部補正(Photoshopなど)
説明文や注釈を添えて誤解を避ける
提案資料では「イメージ図」扱いにする
このような感じで使えば、現実の設計とのギャップをカバーしつつ、ビジュアルインパクトを維持できます。
まとめ

建築パース制作における画像生成AIの活用は、今や一部のクリエイターだけのものではなく、設計やデザインの現場でも実用的な手法として広がっています。Midjourney、Firefly、DALL·E 3といった主要ツールはそれぞれ異なる特徴を持ち、用途や目的によって適切な選び方が求められます。
たとえば、コンセプトスケッチや空間の雰囲気づくりにはMidjourneyが向いており、印象的で感覚的な提案が可能です。一方で、プレゼン資料や実施設計の下絵として使いたい場合は、写実的で商用利用に強いFireflyやDALL·E 3が適しています。また、SNS向けのビジュアルやスピード重視の提案には、操作の手軽さやアート性を備えたツールが重宝されます。
重要なのは、ツールの特性やライセンス条件を理解した上で、自身の業務やプロジェクトに合ったAIを選択することです。AIの生成力に頼りすぎるのではなく、自分の設計意図やクリエイティブな判断を組み合わせることで、より魅力的で説得力のある建築表現が実現できます。
画像生成AIは、建築の未来を広げる選択肢のひとつとして、今後ますます重要なツールとなっていくでしょう。