Chaos Coronaとは?建築CG・3DCGに使えるレンダラーを徹底解説【使い方・特徴・料金】
- KIMURA Tetsuya
- 5月21日
- 読了時間: 8分

建築パースやインテリアCGの分野で、「リアルで美しいビジュアルを、できるだけシンプルな操作で作りたい」という方に注目されているのが、(旧Corona Renderer)です。
3ds MaxやCinema 4Dと連携できるこのCPUベースのレンダリングエンジンは、V-Rayよりも操作が直感的で、学習コストが比較的低いことから、建築CG初心者や中小スタジオにも導入されはじめています。
ただし、日本国内では情報がまだ少なく、「使い方は?」「料金は?」「V-Rayとどう違うの?」といった基本がわからないという声も少なくありません。
この記事では、Chaos Coronaの特徴・対応ソフト・使い方・価格体系・メリット/デメリットをわかりやすく整理し、建築CG・ビジュアライゼーション用途での活用可能性について詳しく解説します。
Chaos Coronaとは?
Chaos Coronaは、直感的な操作でフォトリアルなビジュアルを実現できる、CPUベースのレンダリングエンジンです。特に建築パースやインテリアCGの分野で注目を集めており、3ds MaxやCinema 4Dと連携して使用することで、設計意図を的確に表現した高品質なビジュアルを短時間で作成できます。
もともとは2009年、チェコ工科大学の学生プロジェクトとしてOndřej Karlík氏が開発をスタート。その後、Render Legionという企業として独立し、2017年にV-Rayを手がけるChaos Groupに買収されました。現在は「Chaos Czech」ブランドのもとで開発が継続されており、2022年に名称も「Corona Renderer」から「Chaos Corona」へと変更されました。
Chaos Coronaは、バイアスレンダリング※1/アンバイアスレンダリング※2の両方に対応しており、用途に応じた柔軟な設定が可能です。特に初期設定のままでも美しいレンダリング結果が得られることから、初心者や小規模スタジオにも導入しやすいという特長があります。
また、AIによるGPUノイズ除去、インタラクティブレンダリング(リアルタイムでの確認)、分散レンダリング(複数マシンによる処理分散)など、作業効率を高める機能も充実。ライブラリ機能「Cosmos」では家具や人物、HDRIなどのレンダリング素材も豊富に取り揃えられており、V-RayやMental Rayからのシーン移行ツールも搭載されています。
現状、日本では知名度がまだ高くありませんが、海外ではV-Rayに次ぐ建築ビジュアライゼーション向けレンダラーとしての地位を確立しつつあります。
※1.バイアスレンダリング:計算の一部を省略し速く描画する方式
※2.アンバイアスレンダリング:光の挙動を正確に計算しリアルな見た目を再現する方式
Chaos Coronaの6つの特徴

Chaos Coronaには、初心者にも扱いやすい操作性と、プロフェッショナルにも応える高度な機能の両方が備わっています。ここでは、建築CGや3DCG制作の現場で支持される主な特徴を見ていきましょう。
Chaos Coronaの6つの特徴
高品質な物理ベースレンダリング
シンプルで直感的な操作性
豊富なポストプロセッシング機能
Chaosエコシステムとの統合
先進的なレンダリング機能
定期的なアップデートとサポート
1. 高品質な物理ベースレンダリング
Chaos Coronaは、現実の光の動きや反射を忠実に再現できる物理ベースのレンダリングエンジンです。
バイアスレンダリングとアンバイアスレンダリングの両方に対応しており、シーンの内容や目的に応じて柔軟に使い分けることができます。
光の陰影や素材の質感までリアルに描写できるため、建築ビジュアライゼーションでも完成度の高い表現が可能です。
2. シンプルで直感的な操作性
Chaos Coronaは、ユーザーインターフェースがシンプルで扱いやすく、複雑な設定をしなくても高品質なレンダリングが行えます。
初期設定のままでも十分に美しい結果が得られるため、操作に慣れていない初心者から、効率を重視するプロまで幅広く活用されています。
3. 豊富なポストプロセッシング機能
Chaos CoronaのVirtual Frame Buffer(VFB)には、カラーグレーディングや露出の調整、ブルームやグレアといった視覚効果など、幅広いポストプロセッシング機能が標準で備わっています。
レンダリング後の仕上げ作業を外部ソフトに頼らず、そのままCorona内で完結できるのが大きな特長です。
4. Chaosエコシステムとの統合
Chaos Coronaは、同社が提供する他の製品とスムーズに連携できる設計になっています。
たとえば、Chaos Cosmosライブラリを使えば、家具や植栽などの高品質な3Dアセットやマテリアルをすぐにシーンに追加できます。
また、Chaos Scatterを活用することで、オブジェクトを自動的かつ効率的に配置でき、作業時間の短縮にもつながります。
5. 先進的なレンダリング機能
Chaos Coronaには、インタラクティブレンダリングや分散レンダリング、AIによるノイズ除去など、効率的な制作を支える機能が多数搭載されています。
これらにより、作業中に結果をリアルタイムで確認しながら調整できるほか、複数のマシンを活用してレンダリング時間を短縮することも可能です。
6. 定期的なアップデートと安心のサポート
Chaos社は、Chaos Coronaに対して機能強化や不具合修正を含むアップデートを定期的に提供しています。
常に最新の状態で使えるため、パフォーマンスの向上や新機能の追加もいち早く体験でき、安心して制作に集中できます。
Chaos CoronaとV-Rayとの違い

Chaos CoronaとV-Rayは、いずれも建築ビジュアライゼーションで高く評価されているレンダリングエンジンですが、その設計思想や操作感には明確な違いがあります。
V-Rayは業界標準とも言える豊富な機能とカスタマイズ性を誇り、大規模なプロジェクトや細かな調整を求める上級者・スタジオ向けに適しています。
一方で、Chaos Coronaは「簡単に高品質なレンダリングができる」ことを重視して開発されており、操作のシンプルさやデフォルト状態での高い品質に魅力を感じるユーザーに支持されています。
料金面でもCoronaの方が手頃で、特に小規模な制作チームやフリーランスにとって導入しやすい選択肢となっています。V-RayがGPUとCPUの両方に対応するのに対し、CoronaはCPUベースですが、その分シーン全体の表現が安定しやすく、実写ライクな質感を出しやすい点も特徴です。
どちらが優れているというよりも、「複雑な制御を行いたいか(V-Ray)」「シンプルに速く美しい結果を得たいか(Corona)」という目的によって選ぶべきツールが変わります。使用する3Dソフトやレンダリング環境との相性、チームのスキルレベルなどを踏まえて、自分に合ったレンダラーを選択することが重要です。
Chaos Corona | V-Ray | |
操作性 | シンプル・直感的(初心者向け) | 高機能でやや複雑(中〜上級者向け) |
レンダリング方式 | CPU専用 | CPU / GPU両対応 |
学習コスト | 低め | 高め |
表現の幅 | 建築・インテリアCGに最適 | 建築・VFX・映像制作など幅広く対応 |
処理速度 | 安定しているがやや遅め | GPU対応により高速 |
拡張性 | 最小限 | プラグイン・カスタマイズ性が非常に高い |
Cosmos対応 | ○ | ○ |
主な対応ソフト | 3ds Max / Cinema 4D | 3ds Max / SketchUp / Rhino / Revitなど |
商用ライセンス価格 | 月額約5,720円(税込) または 年額約59,400円(税込) | 月額約7,700円(税込) または 年額約77,000円(税込) |
トライアル | 30日間(無料) | 30日間(無料) |
※2025年5月時点。価格は公式サイト(日本代理店またはChaos公式)の税込表示を参考にしており、為替変動により変動する可能性があります。
※いずれもサブスクリプション制。アカデミック版・法人契約の場合は別プランが用意されています。
Cinema 4D版と3ds Max版、どっちを選ぶべき?
Chaos Coronaは、Cinema 4D(C4D)と3ds Maxの両方に対応していますが、それぞれのプラットフォームで操作性や機能に違いがあります。
たとえば、モーショングラフィックスや製品ビジュアルを手がけるC4DユーザーにはCinema 4D版、建築パースやVFXなど大規模なシーンを扱う場合には3ds Max版が向いているとされています。また、macOSを使用している場合はC4D版一択になります。
以下の比較表を参考に、自分の制作スタイルや作業環境に合ったバージョンを選んでください。
Cinema 4D版 | 3ds Max版 | |
対応OS | Windows / macOS | Windowsのみ |
レンダリング速度 | 若干遅い(約25%遅いとの報告あり) | 高速(C4D版より約25%速い) |
インターフェース | 直感的で初心者向け | プロ向けでカスタマイズ性が高い |
Chaos Scatter | 基本的な散布機能をサポート | 高度な散布機能(ブラシによる手動配置など) |
シーンコンバーター | C4Dネイティブのマテリアルやライトの変換をサポート | V-Rayや他のレンダラーからの変換に強い |
対応バージョン | 2016(R17〜※)〜2024年 | 2016〜2024年 |
主な用途 | モーショングラフィックス、製品デザイン、建築CG | 建築ビジュアライゼーション、ゲーム、VFX |
※Cinema 4Dは「R◯◯(Release)」という独自のバージョン体系で表記されており、R17は2016年リリース版に相当します。
Chaos Coronaの料金プラン

Chaos Coronaの料金は、公式サイトと日本代理店(株式会社オーク)のいずれからでも購入できます。価格帯自体に大きな違いはありませんが、サポート体制や契約手続きの利便性など、それぞれのルートに特有のメリットがあります。
公式サイトでは、Soloプラン(月額$59.90/年額$394.80)とPremiumプラン(年額$514.80)が用意されており、どちらも3ds Max版・Cinema 4D版の両方に対応しています。クレジットカード決済で即時に利用を開始でき、コスト面ではわずかに有利です。
一方、日本代理店では、Soloプラン(月額9,790円/年額64,680円)、Premiumプラン(月額11,660円/年額81,840円)という税込価格で提供されています。金額だけを見ると若干高く感じるかもしれませんが、日本語による問い合わせ対応、法人名義での見積・請求書・領収書発行、銀行振込対応など、日本国内の商習慣に合った取引が可能という点で、特に法人や商用利用を前提としたユーザーにとっては安心感があります。
以下に、公式サイトと日本代理店それぞれの価格を比較した表をまとめてみました。
プラン | 公式サイト(USD) | 日本代理店(円・税込) |
Solo(月額) | $59.90(約9,000円) | 9,790円 |
Solo(年額) | $394.80(約59,000円) | 64,680円 |
Premium(年額) | $514.80(約77,000円) | 81,840円 |
※2025年5月時点。価格は為替変動により変動する可能性があります。
まとめ

Chaos Coronaは、建築ビジュアライゼーションから製品デザイン、モーショングラフィックスに至るまで、幅広い3DCG制作に対応する高品質なレンダラーです。直感的な操作性とリアルなライティング表現を兼ね備えながら、Cinema 4D・3ds Maxそれぞれに最適化された柔軟な対応環境を提供しており、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに選ばれています。
本記事では、Chaos Coronaの特徴や他レンダラーとの違い、料金プラン、バージョンごとの選び方までを徹底解説しました。実際の制作フローや目的に応じて、最適なプランや使用環境を選ぶことで、CG制作のクオリティと効率を大きく向上させることができます。
まずは体験版から試して、自分の制作スタイルにフィットするかを確認してみてください。Chaos Coronaのリアルでスムーズなレンダリング体験が、きっと新しい表現の可能性を広げてくれるはずです。