【初心者向け】建築パースの種類について解説
更新日:9月25日

一口に建築パースといっても、その種類はさまざまです。建物を外側から表現する「外観パース」、室内空間を表現する「内観パース」、建物や周辺環境を上空から見渡す「鳥瞰パース」など、目的や伝えたい内容によって適した表現方法が異なります。
また、現在では3DCGを活用した建築パースが広く使われており、設計段階でのデザイン確認からクライアントへのプレゼンテーション、広告・販売促進まで、幅広い場面で活用されています。
この記事では、建築パースの基本的な役割から代表的な種類、それぞれの特徴や用途まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
CONTENTS
建築パースとは?

建築パースとは、建物や空間の完成イメージを立体的に表現した図や画像のことです。
「パース」は英語の「Perspective(パースペクティブ)」に由来し、遠近法を用いて建物や室内空間を実際に目で見たときに近い形で表現します。
建築設計では平面図・立面図・断面図などの図面が使われますが、図面だけでは完成後の建物の形や空間の広がり、素材の質感、家具の配置などを具体的にイメージすることが難しい場合があります。
そこで活用されるのが建築パースです。建物を立体的に表現することで、建築の専門知識がない人にも完成イメージをわかりやすく伝えられます。
建築パースは、設計段階でのデザイン確認をはじめ、クライアントへのプレゼンテーション、不動産広告、コンペ、販売促進など、さまざまな場面で利用されています。
建築図面と建築パースの違い
建築図面と建築パースは、どちらも建物を表現するものですが、その目的や表現方法には違いがあります。
建築図面 | 建築パース | |
主な目的 | 建物の設計情報を正確に伝える | 完成後のイメージを視覚的に伝える |
表現 | 平面図・立面図・断面図など | 立体的な透視図・CG画像など |
主な情報 | 寸法・形状・配置・構造など | 空間・素材・色・光・家具・植栽など |
見え方 | 記号や線を中心に表現 | 実際に見た状態に近い形で表現 |
主な用途 | 設計・施工 | デザイン確認・プレゼン・広告など |
建築図面が建物をつくるための情報を正確に伝える役割を持つのに対し、建築パースは「完成するとどのように見えるのか」を伝えることに適しています。
建築パースで表現できること
建築パースでは、建物の形状だけでなく、さまざまな要素を組み合わせて完成後の空間を表現できます。

たとえば、外壁や床、木材、ガラスなどの素材、壁や家具の色、自然光や照明による明るさ、影や反射、家具やインテリア、植栽、人物、周辺環境などです。
これらを加えることで、図面だけでは伝わりにくい建物のスケール感や空間の雰囲気、実際に利用したときのイメージまで視覚的に伝えられます。
現在では3DCGを利用して建築パースを制作する方法が広く使われており、設計変更に合わせて視点や素材、照明などを調整したり、同じ3Dデータから異なるアングルのパースを制作したりすることも可能です。
CGパースとは

CGパースとは、3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)を使って制作する建築パースのことです。
建物や室内空間を3D空間上でモデリングし、壁や床、ガラス、木材などの素材を設定したうえで、照明や太陽光、カメラの位置などを調整して画像として仕上げます。
従来の建築パースには手描きによる表現もありますが、現在では建築設計や不動産、インテリアデザインなど幅広い分野でCGパースが活用されています。
CGパースの大きな特徴は、実際に建物が完成する前の段階でも、完成後の姿をリアルに表現できることです。
外壁や床の素材、家具、照明、植栽、人物などを加えることで、建物の形だけでなく、空間の雰囲気やスケール感まで具体的に伝えられます。
CGパースができるまで
一般的なCGパース制作では、まず設計図や資料をもとに建物の形状を3Dで作成します。その後、素材や色、照明、カメラなどを設定し、レンダリングによって画像を生成します。
工程 | 主な作業 |
モデリング | 建物や家具などの形状を3Dで作成する |
マテリアル・テクスチャ設定 | 木材、コンクリート、ガラスなどの素材や質感を設定する |
ライティング | 太陽光や照明を設定し、光と影を調整する |
カメラ設定 | 視点や画角、構図を決める |
レンダリング | 3Dデータを計算して2D画像として出力する |
レタッチ | 色や明るさ、人物、植栽などを調整して仕上げる |
CGパース制作に使われる主なソフト
CGパースの制作には、建物を3Dで作成するモデリングソフトや、光・素材を計算して画像を生成するレンダリングソフトなどが使われます。
代表的なソフトには、Sketchup Pro、3ds Max、Blender、Revitなどがあります。また、よりリアルな建築パースを制作するために、V-Ray、Chaos Corona、Lumion、Twinmotion、Enscape、D5 Renderなどを組み合わせることもあります。
種類 | 主なソフト | 主な役割 |
3Dモデリング・3DCG | 建物や家具などの3Dモデルを作成する | |
BIM | 建築情報を持った3Dモデルを作成・管理する | |
レンダラー | 光や素材を計算し、高品質な画像を生成する | |
建築ビジュアライゼーション | 建築モデルを読み込み、リアルタイムで外観・内観などを視覚化する |
使用するソフトによって得意な作業や制作方法は異なり、複数のソフトを組み合わせてCGパースを制作することも一般的です。
CGパースのメリット
CGパースでは3Dデータを利用するため、一度モデルを制作すれば、カメラの位置を変更して異なるアングルから建物を確認したり、外壁や床の素材、家具、照明などを変更して複数のデザイン案を比較したりできます。
また、写真のようにリアルな表現だけでなく、目的に応じてシンプルなCGやイラストに近い表現に仕上げることも可能です。
設計段階で完成イメージを共有できるため、デザインの検討やクライアントとの認識合わせにも役立ちます。
メリット | 内容 |
完成前にイメージを確認できる | まだ存在しない建物や空間を視覚化できる |
デザインを比較しやすい | 素材・色・家具・照明などを変更して検討できる |
複数の視点から確認できる | 同じ3Dモデルから異なるアングルのパースを制作できる |
イメージを共有しやすい | 図面を読み慣れていない人にも完成像を伝えやすい |
幅広い用途に活用できる | 設計検討、プレゼン、広告、販売促進などに利用できる |
CGパースは、単に「きれいな完成予想図を作る」ためだけのものではありません。設計内容を確認し、関係者と完成イメージを共有するためのコミュニケーションツールとしても重要な役割を持っています。
建築パースの主な種類

建築パースには、建物をどの位置・視点から見せるかによっていくつかの種類があります。
代表的なのが、建物の外側を表現する「外観パース」、室内空間を表現する「内観パース」、建物や敷地全体を上空から見渡す「鳥瞰パース」です。
同じ建築物でも、パースの種類によって伝えられる情報や適した用途が異なります。まずは、それぞれの特徴を確認してみましょう。
外観パース

外観パースとは、建物を外側から見た完成イメージを表現する建築パースです。
住宅やマンション、オフィス、店舗、ホテル、商業施設など、さまざまな建築物の外観を視覚化するために利用されています。
建物そのものの形状だけでなく、外壁や屋根、窓、エントランスなどのデザイン、素材や色、植栽、道路、周辺の建物なども表現できます。
また、人物や車を配置することで建物のスケール感を伝えたり、昼・夕方・夜など時間帯を変えることで、建物の異なる印象を表現したりすることも可能です。
設計段階での外観デザインの確認だけでなく、クライアントへのプレゼンテーションや不動産広告、コンペなどにも幅広く利用されています。
内観パース

内観パースとは、建物の内部を視覚化した建築パースです。
住宅のリビングやキッチンをはじめ、店舗、ホテル、オフィス、クリニック、レストランなど、さまざまな室内空間の完成イメージを表現できます。
床・壁・天井などの仕上げ材、家具、照明、設備、インテリア、装飾などを具体的に表現できるため、空間全体のデザインや配色を確認する際にも役立ちます。
さらに、窓から入る自然光や照明による光と影を表現することで、図面だけでは伝わりにくい空間の明るさや雰囲気まで確認できます。
インテリアデザインの検討やクライアントへの提案、店舗・オフィスの内装計画、不動産広告などで広く利用されています。
鳥瞰パース

鳥瞰パースとは、建物や敷地を上空から見下ろすような視点で表現した建築パースです。

「鳥瞰(ちょうかん)」とは、鳥が空から見下ろすように全体を眺めることを意味します。
通常の外観パースでは確認しにくい建物全体の形状や、複数の建物の位置関係、道路、駐車場、広場、植栽などを一つの画面で把握できることが特徴です。
そのため、大規模な商業施設や複合施設、住宅地、再開発、都市計画、ランドスケープなど、広い範囲をまとめて伝えたい場合に適しています。

また、屋根を取り除いた状態で建物内部を上から見せる表現を用いることで、間取りや家具配置、各空間のつながりをわかりやすく伝えることもできます。
外観パースや内観パースが「その場所からどのように見えるか」を伝えるのに対し、鳥瞰パースは「建物や敷地全体がどのような構成になっているか」を伝えることに適した表現方法です。
プレゼンテーションパース

プレゼンテーションパースは、設計案やデザインの意図をクライアントなどに伝えるために制作する建築パースです。
建物の形状や空間構成だけでなく、素材、色、家具、照明、植栽などを加えることで、完成後のイメージを具体的に共有できます。
設計図を読み慣れていない人にも内容を伝えやすいため、設計提案やコンペ、打ち合わせなど幅広い場面で利用されています。
販促・広告用パース

販促・広告用パースは、建物や空間の魅力を視覚的に伝えることを目的とした建築パースです。
まだ完成していないマンションや住宅、商業施設、ホテルなどでも、CGを利用することで完成後のイメージを広告に使用できます。
Webサイトやパンフレット、ポスター、不動産広告などに掲載されるため、建築的な情報だけでなく、光の演出や人物、植栽、家具などを使って空間の魅力や利用シーンを伝えることも重要になります。
検討用パース

検討用パースは、設計やデザインの内容を確認・比較するために制作する建築パースです。
たとえば、外壁の素材や色を変更した複数のパターンを作成したり、家具の配置や照明の位置を変更したりすることで、完成前にデザインを比較できます。
最終的なビジュアルの美しさだけを目的とするのではなく、設計上の判断や関係者との認識共有に活用されることが特徴です。
景観・ランドスケープパース

景観・ランドスケープパースは、建物だけでなく、その周辺環境まで含めて表現する建築パースです。
道路や歩道、広場、公園、植栽、水辺、周辺の建築物などを含めることで、建物が街や敷地の中でどのように見えるのかを確認できます。
都市開発や再開発、大規模施設、公園、外構計画など、建築物と周辺環境との関係が重要になるプロジェクトで利用されています。
ウォークスルー・動画

静止画だけでなく、3DCG空間の中を実際に歩いているような映像を制作する方法もあります。
カメラを建物の外部から内部へ移動させたり、室内を歩くように見せたりすることで、一枚のパースだけでは伝えにくい空間のつながりや広がりを表現できます。
建築プレゼンテーションや施設紹介、不動産広告、Webサイトなどで活用されています。
VR・リアルタイムCG

近年では、建築物を3D空間としてリアルタイムに表示し、利用者自身が視点を動かしながら建物や室内を確認する方法も利用されています。
VR(仮想現実)を使って完成前の住宅や施設を疑似体験したり、パソコン上で建物の中を自由に移動したりすることができます。
Twinmotion、Lumion、Enscape、D5 Renderなどの建築ビジュアライゼーションツールでは、3Dモデルをリアルタイムで確認しながら、素材や照明、周辺環境などを調整することもできます。
従来の建築パースが一つの視点を切り取った「静止画」を中心としていたのに対し、現在の建築ビジュアライゼーションでは、静止画・動画・リアルタイムCG・VRなど、目的に応じてさまざまな方法で建築空間を伝えられるようになっています。
まとめ

建築パースは、建物や空間の完成イメージを立体的に表現し、設計内容をわかりやすく伝えるために活用されます。
代表的な種類には、建物を外側から表現する「外観パース」、室内空間を表現する「内観パース」、建物や敷地全体を上空から見渡す「鳥瞰パース」があります。それぞれ視点や伝えられる情報が異なるため、目的に合わせて使い分けることが大切です。
また、建築パースは視点だけでなく、用途によっても表現方法が変わります。設計やデザインを比較する検討用パース、建物の魅力を伝える販促・広告用パース、周辺環境まで表現する景観・ランドスケープパースなど、さまざまな場面で利用されています。
現在では3DCGを活用した建築パースが広く普及し、静止画だけでなく、ウォークスルー動画やVR、リアルタイムCGなどを使って建築空間を体験するように確認することも可能になっています。
建築パースの種類とそれぞれの特徴を理解し、「誰に、何を、どのように伝えたいのか」に合わせて適切な表現方法を選びましょう。






