外観パースの種類と作り方を初心者向けに解説|住宅・商業施設・コンペ別のポイントも紹介
- KIMURA Tetsuya
- 7月12日
- 読了時間: 9分

建築パースと聞くと難しそうな印象を持つ方も多いですが、実は外観パースは建築初心者や設計アシスタント、営業担当者でも十分に活用できる「伝えるための道具」です。図面だけでは伝わりにくい完成イメージを、視覚的にわかりやすく表現できるのが外観パースの大きな特徴です。
戸建て住宅、商業施設、公共建築、マンション販売、設計コンペなど、用途によって求められるパース表現は少しずつ異なります。本記事では、外観パースの種類・用途別ポイント・基本的な作り方の流れを、初心者にもわかりやすく整理して解説します。
これからパース作成に挑戦したい方や、外注依頼時に最低限の知識を持ちたい方にも役立つ内容です。
外観パースとは?初心者向けに基本を解説

外観パースとは、完成予定の建物をCGやイラストで立体的に描き出し、誰でもイメージしやすい形で「完成イメージを可視化」する技法です。建築設計の現場では、施主・クライアント・自治体・一般消費者向けに広く活用されています。
図面とパースの違い

設計図面(平面図・立面図・断面図)は建築の詳細情報を正確に伝える技術資料ですが、建築に詳しくない人にとっては完成後のイメージが掴みにくいという課題があります。一方で外観パースは、あくまで「目で見てわかる完成イメージ」を重視しており、建物の全体像・デザインの雰囲気・素材感・光の当たり方などを直感的に伝えられるのが大きな特徴です。
手描きパースとCGパース

以前は建築士やデザイナーが水彩や手描きスケッチで作成していた外観パースも、現在では3DCGやAI技術の進歩によって、誰でも短時間で高品質なパースを作成できる時代になりました。特に建築用3DCGソフトや画像生成AIを活用すれば、専門的な作図スキルがなくても説得力のあるビジュアル提案が可能になります。
外観パースの主な種類と用途
外観パースは「誰に・何を見せるのか」によって、少しずつ表現方法や重視するポイントが異なります。ここでは代表的な外観パースの種類と用途を整理します。
たとえば、戸建住宅のパースであれば、家族が住むイメージが伝わるように生活感や植栽を丁寧に描き込みます。商業施設であれば人の流れや周辺環境との調和を重視します。設計コンペの場合はアイデアや世界観を印象的に表現することが優先され、夜景・夕景・鳥瞰などの演出を取り入れるケースも多くなります。
用途別の特徴を簡潔にまとめると次のようになります。
パース種類 | 主な用途 | 重視ポイント |
住宅パース | 施主提案・販売広告 | 生活感・外構・光の演出 |
商業施設パース | 開発計画・営業提案 | 周辺環境・スケール感・人の流れ |
コンペ・プレゼンパース | 設計コンペ・意匠提案 | インパクト重視・演出表現 |
マンション販売パース | 分譲広告・モデルルーム資料 | 美観・生活感・リアルな暮らしの想像 |
どのパースも「建物をどう見せるか」「誰が見るか」を意識することが大切です。これを整理したうえで制作に入ると、より伝わる外観パースを作成できます。
外観パース制作の基本工程

外観パースは「ただ図面を立体にする作業」ではありません。プロジェクトの目的やコンセプトをもとに、完成イメージを整理しながら段階的に仕上げていく工程です。ここでは初心者にもわかりやすい流れを紹介します。
STEP 1. アイディア整理とプランニング

まず、建築家やデザイナーは建物の用途・ターゲット・周辺環境に合わせて、どんなパースに仕上げるのか方向性を定めます。スタイル(モダン・クラシック・和風など)、色彩、外壁素材、景観との調和もこの段階で整理します。ここがパース制作の土台になります。
STEP 2. スケッチ・イメージ図の作成

続いて、簡単な手描きスケッチやデジタル概念図を作成します。建物の大まかな形・配置・周辺要素(庭、道路、隣接建物など)を視覚的に確認する作業です。AI画像生成ツールでラフイメージを出して検討する例も増えています。
STEP 3. 3Dモデリング

イメージが固まったら、3Dモデリングソフトで建物の立体モデルを作成します。建物の形状、窓、ドア、屋根の細部寸法を正確に入力し、全体像を具体化していきます。BIM・CAD・SketchUp・Blenderなど、使用ツールは様々です。
STEP 4. マテリアルと照明設定

モデルが完成したら、外壁材・ガラス・屋根材・金属部分など、各部位の質感を設定します。同時に、自然光・人工照明・時間帯などのライティングも調整。ここでリアリティが大きく高まります。
STEP 5. カメラアングルの決定
完成イメージの見せ方を決めるのがカメラ設定です。視点の高さ・広角/望遠の選択・正面/斜めアングルなど、魅力が伝わる構図を探します。設計意図や用途によってアングルの選び方は大きく変わります。
STEP 6. レンダリング

設定が整ったらレンダリングを実行します。3Dモデルに光や質感を加味して、完成イメージを高画質画像として出力する工程です。ソフトによって数分〜数時間かかることもあります。
STEP 7. レタッチと最終仕上げ

最後に、Photoshopなどで植栽・人物・空・車などを合成し、全体の色味・明るさ・バランスを整えます。この仕上げ作業で、よりリアルで印象的な外観パースが完成します。
外観パース制作は「段階的に整えていく作業」です。初心者の方でも一度流れを理解すれば、回数を重ねるごとに上達していきます。
【用途別】住宅・商業施設・コンペの作成ポイント

外外観パースは、建物の種類や用途によって「どんなイメージを伝えたいのか」が少しずつ変わります。特に初心者は目的ごとのポイントを押さえておくと、より魅力的なパースに仕上がりやすくなります。
住宅パースの場合

住宅外観パースでは、実際の暮らしをイメージしやすくすることが大切です。植栽や花壇、車、表札、照明などを自然に配置することでリアルさが増します。ただし、小物を入れすぎるとゴチャゴチャした印象になるので、適度に情報量を整理するのがコツです。
また、光の表現も重要です。朝・昼・夕景の違いだけで雰囲気が大きく変わります。特に営業資料や広告では、晴天の青空+緑の植栽という定番の組み合わせが好まれます。
商業施設パースの場合

商業施設や公共施設のパースでは、スケール感と賑わい感をどう出すかがポイントです。建物単体よりも周辺環境全体を含めた描写が重要になり、人の流れや車、広場の雰囲気を自然に加えると現実感が高まります。
さらに、施設の使われ方をイメージさせることで、来場者の動線や利便性もわかりやすく伝えられます。夕景・夜景のライティング演出もよく使われます。
コンペ・プレゼンパースの場合

コンペやプレゼン用のパースでは、第一印象でインパクトを与えることが重要です。大胆なカメラアングルや鳥瞰視点、ドラマチックな空の演出、光のコントロールで魅せる演出を行います。
ただし、演出に偏りすぎて設計の特徴がわかりづらくならないよう注意が必要です。建物そのものが主役であることは忘れないようにしましょう。
用途ごとに「誰に何を伝えるのか」を明確にしておくことが、失敗しない外観パース制作のコツです。
外観パースの作り方はソフトで変わる【主要ソフト解説】

外観パース制作に使われる主なソフトを、初心者でもわかりやすく整理して紹介します。目的や予算に合わせて最適なツールを選ぶことが、効率的な制作につながります。
SketchUp
向いているユーザー:初心者〜小規模建築設計者
費用:無料版あり/有料版(サブスクリプション:年額制)
主な特徴:操作が非常にシンプル、積み木感覚で立体作成、学習コストが低い
SketchUpは3Dモデリング初心者に最も広く使われている建築系ソフトのひとつです。住宅や店舗などの外観パースなら短期間の練習でも実用レベルに到達可能です。モデリングから簡単なパース出力まで一貫して行え、外注前のプラン検討や施主説明にも役立ちます。
Blender
向いているユーザー:学生・フリーランス・個人クリエイター
費用:完全無料
主な特徴:高機能・高品質レンダリング、アニメーション・VFXにも対応、カスタマイズ性が高い
Blenderは無料ながらプロ並みの高品質な外観パースを作成できるソフトです。学習コストはやや高めですが、一度習得するとモデリング・ライティング・レンダリングまで幅広い建築ビジュアライゼーションに対応できます。個人でも商業クオリティを狙える貴重なツールです。
3ds Max
向いているユーザー:プロ建築CG・法人制作会社
費用:高額(サブスクリプション制)
主な特徴:建築CG業界の定番、精度と安定感が高い、外注先でも標準採用
AUTODESK社の3ds Maxは長年プロ建築CG業界で標準とされる高性能ソフトです。商業施設・高層ビル・大規模開発など精度が要求されるパース制作に向いています。法人ライセンスが中心で、法人外注先と連携しやすいのも強みです。
Cinema 4D
向いているユーザー:プレゼン動画・広告CG担当者
費用:高額(サブスクリプション制)
主な特徴:アニメーション表現に強い、映像向け建築表現も可能
Cinema 4Dは建築静止画だけでなく、プレゼン動画・広告ムービーの制作現場で使われることも多いソフトです。動きのあるシーンやモーショングラフィックス的な建築紹介に適しています。プロモーション用の高級感あるビジュアル制作に使われます。
Lumion
向いているユーザー:設計事務所・住宅メーカー
費用:高額(買い切りライセンス)
主な特徴:高速レンダリング、外構・植栽・水面表現が得意、仕上げ用途に最適
Lumionは、3Dモデルを読み込んでリアルな外観パースに仕上げるリアルタイムレンダラーです。設計途中の検討用・クライアント提案用・パンフレット制作まで幅広く活用されています。外構・水面・植栽表現が強力で、短時間で完成度の高いパースが作れます。
まとめ

外観パースは、建物の完成イメージをわかりやすく「伝えるための設計図」と言えます。建築の専門知識がない人にも、空間の魅力や使い方を直感的にイメージしてもらう強力なプレゼンツールです。
パース制作では、住宅・商業施設・コンペなど用途に合わせた表現の工夫が重要です。さらに、自分の目的やスキルレベルに合ったソフトを選ぶことで、効率よくクオリティの高いパースが作れるようになります。
最初は「難しそう」と感じるかもしれませんが、基本を押さえて何度も作成していく中で、表現の幅や精度は必ず向上していきます。ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に、実際に手を動かして外観パース制作にチャレンジしてみてください。