建築CGパースの制作は、建築プロジェクトをビジュアル化し、クライアントや関係者にプロジェクトのイメージを伝える重要な工程です。
この記事では、建築CGパースの制作工程を紹介し、データの準備から納品までのステップを詳しく解説します。
1.データの準備
建築CGパースの制作において、正確かつ十分なデータの準備が不可欠です。
以下のデータが用意されている必要があります。
外観パースの場合
配置図、 平面図、立面図、断面図などのCADデータもしく手書き資料
(JWC DXF DWG MCDのいずれの形式)
内観パースの場合
平面図、展開図のCADデータもしく手書き資料(JWC DXF DWG MCDのいずれかの形式)
図面データがある場合
建築CGの制作開始には、計画の一般図(平面、立面、配置図)が欠かせません。
これらの図面は3D形状の基礎となり、建築CGを制作するために必要です。
図面データはPDFではなく、「DXF」や「DWG」、またはJWCAD形式の変換用データが必要です。
特にディテールや細かい表現が必要な箇所については、詳細図やスケッチなどで指示を用意しておくことが重要です。
建築物の特定の部分に対する要望やデザインの細部が正確に伝わります。
一般的な外観・内観パース制作に必要な図面の種類を把握し、それに合わせてデータを整理しておくことも大切です。
外観の場合には平面図、立面図、配置図、外構図などが、内観の場合には平面図、展開図、床伏図、配灯図、詳細図などが必要です。
変換用の図面データだけでなく、確認用のPDF図面も用意することで、制作者は計画を把握しやすくなり、制作プロセスもスムーズに進行します。
これにより、クライアントとの円滑なコミュニケーションを図りながら、建築CGパースの制作に取り組むことができます。
図面データがない場合
設計コンペや制作時間に制約がある場合、十分な図面が用意できないことがあります。
こうした状況では、柔軟な対応が求められます。
多くの制作会社は、簡単なスケッチや最低限の情報でも対応可能ですので、問い合わせてみると良いでしょう。
この際、平面や立面などの簡易な資料を提供することで、最低限のプロジェクト内容とボリュームが理解されやすくなります。
クライアントや制作会社との円滑なコミュニケーションが確立されれば、より迅速で効率的な進行が期待できます。
自作データがある場合
3D形状を自作している場合、時間と費用を節約できるかもしれませんが、注意が必要です。
一般的に、自作のモデルをそのまま利用できることは少ないです。
データ変換時に問題が生じることや、ディテールの追加や細かい修正が必要な場合がほとんどです。
そのため、最終的には初めから制作を行った方が早いことがよくあります。
それでも、3Dモデルは立体形状を把握する上で有利であり、提供することでプロジェクトの進行がスムーズになります。
2.建築CGパースの制作フロー
①モデリング作業からアングルの確定
建築CGパースの制作は、まず一般図面のデータ提供が不可欠です。
制作会社は3DCGソフトを使用して3次元の形状をモデリングできます。
特に特殊なディテールや造作表現が必要な場合は、詳細図などで指定すると良いでしょう。
提供した仕様書を参照しながら、モデリングで作成した3D形状にマテリアルを貼り付け、照明などの光源を設定して最終のイメージに近づけていきます。
モデリング・ライティング・マテリアル設定が完了すると、制作会社からアングルの候補画像が送られてきます。
この段階でアングルを決定すると、後の作業がスムーズに進行します。
ただし、アングルは簡単に変更できないため、注意が必要です。
変更が必要な場合は追加費用が発生する可能性があるため、慎重に検討することが重要です。
②マッピング(色素材)の設定後、ご確認
提供された素材資料を基に、各面の素材(色、素材写真)を設定するマッピング作業が行われます。
この作業を通じて、色やイメージ感を確認するための画像が提供され、クライアントのご確認が求められます。
③仕上げ作業
アングルが決定されると、制作会社は仕上げの作業に入ります。
見える範囲内でディテール制作や小物の配置、照明の微調整を行いながら、3DCGの作業が完了します。
その後、レンダリングと呼ばれる演算処理が行われ、一枚の画像にまとめられます。
この段階では、画像編集ソフト(Adobe Photoshopなど)を使用して明るさや色の調整、樹木や人物の合成処理が行われます。
これらの作業はポストプロダクションと呼ばれます。
④修正作業
提供された画像を元に、制作会社から修正対応の画像が送られてきます。
計画の内容が正確に反映されているか、細かなチェックを行い、必要に応じて修正を依頼します。
修正指示の際には、「指示の意図」まで伝えることが重要であり、修正が必要な場合は制作時間を考慮してスケジュールを調整することが求められます。
⑤納品
修正対応とチェックが繰り返され、直すべきところがなくなった段階で納品が行われます。
納品は主流としてパース画像のデータ送信が利用され、高画質で容量が小さい「.jpg」形式が一般的です。
画質の劣化が気になる場合は、「.TIF」などの形式での納品を提案できます。
出力や額装が必要な場合は、制作会社によって異なる対応があるため、事前に確認が必要です。
3. まとめ
建築CGパースの制作は、データの準備から始まり、様々な工程を経て完成します。
データの準備では、計画の一般図(平面、立面、配置図)が不可欠であり、これらの図面は3D形状の基礎となります。
図面データがない場合や自作データがある場合でも、制作会社との円滑なコミュニケーションが必要です。
建築CGパースの制作は、データの正確な提供とクリエイターとのコミュニケーションが成功の鍵です。正確でクオリティの高いパースを得るためには、初めから慎重な計画とスケジュールを立て、円滑な進行を心掛けることが不可欠です。
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