建築で活用されるVRとは?できること・ARとの違い・活用事例を初心者向けに解説【2026年版】
- 2025年5月21日
- 読了時間: 22分
更新日:2 日前

VR(バーチャルリアリティ)は、コンピューターで作られた仮想空間を、実際にその場にいるような感覚で体験できる技術です。ゲームやエンターテインメントだけでなく、建築、医療、教育、研修など、さまざまな分野で活用されています。
建築分野では、完成前の建物や室内をVR空間で確認したり、設計した空間を実際の大きさに近い感覚で体験したりするなど、図面や通常の建築パースとは異なる方法でデザインを確認できます。
この記事では、VRの基本的な仕組みやARとの違い、建築をはじめとしたさまざまな分野での活用事例を初心者向けにわかりやすく解説します。
「VRとはどのような技術なのか知りたい」「建築やインテリアではどのように活用できるの?」という方は、ぜひ参考にしてください。
VRとは?

VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)とは、日本語で「仮想現実」と呼ばれる技術です。
コンピューターで作られた3D空間などをVRゴーグル(VRヘッドセット)を通して見ることで、ユーザーは仮想空間の中に入り込んだような感覚でコンテンツを体験できます。
VRゴーグルでは、頭を動かすとその動きに合わせて仮想空間の視点も変化します。さらに、対応するコントローラーやハンドトラッキングを使用すれば、仮想空間にあるものを選択したり操作したりすることもできます。
VRはゲームやエンターテインメントだけでなく、建築・建設、教育、医療、トレーニングなど、さまざまな分野で活用されています。
VRはどのような仕組み?

VRでは、映像だけでなく、ユーザーの頭や体の動き、音、操作などを組み合わせることで、仮想空間を体験できるようにしています。
代表的な仕組みを見てみましょう。
・ディスプレイ
VRゴーグルでは、左右の目にそれぞれ少し異なる映像を表示することで、奥行きのある立体的な空間を表現します。
ユーザーの視界を仮想空間で覆うことで、通常のPCモニターで3D画像を見る場合とは異なる没入感を得られるのが特徴です。
・モーショントラッキング
VRゴーグルに搭載されたセンサーやカメラなどを利用して、ユーザーの頭や体の動きを検知します。
代表的なのが「6DoF(Six Degrees of Freedom:6自由度)」です。
6DoFでは、頭を上下・左右に向けたり傾けたりする回転方向の動きに加えて、前後・左右・上下への移動も検知できます。
そのため、顔の向きを変えて周囲を見渡すだけでなく、仮想空間の中を移動するような体験もできます。
・空間オーディオ
VRでは、映像だけでなく音も没入感を高める重要な要素です。
空間オーディオを利用すると、音が聞こえてくる方向や距離などを仮想空間に合わせて表現できます。
たとえば、後ろにあるものから聞こえる音や、離れた場所から聞こえる音などを表現することで、よりその場所にいるような感覚につながります。
・コントローラー・ハンドトラッキング
VRでは、専用コントローラーなどを使って仮想空間を操作できます。
コントローラーの位置や動きを検知することで、仮想空間にあるものを選択したり、移動させたりすることができます。
また、対応するVRゴーグルでは、カメラで手の動きを認識するハンドトラッキングを利用し、コントローラーを使わずに手で操作できる場合もあります。
VRでできること

VRの特徴は、コンピューターで作られた空間を画面の外から見るだけではなく、その空間に入ったような視点で体験できることです。
その特徴を活かし、建築やトレーニング、教育、コミュニケーションなど、さまざまな用途で利用されています。
・建物や空間を体験する
建築・インテリア分野では、設計した建物や室内をVR空間で確認できます。
通常の建築パースでは、決められたカメラアングルから建物や室内を確認します。一方、VRでは仮想空間の中から周囲を見渡すことができるため、空間の広がりや高さ、家具や設備の配置などを体験しながら確認できます。
建物が完成する前に空間を確認したり、設計レビューで3Dモデルを共有したりするなど、設計やプレゼンテーションにも活用できます。
・トレーニングやシミュレーションを行う
VRでは、実際の現場を再現した仮想環境でトレーニングやシミュレーションを行うこともできます。
たとえば、医療分野では手術や医療手技のトレーニング、建設・産業分野では作業手順や安全教育などへの活用が進められています。
現実では再現が難しい状況や、繰り返し練習することが難しい作業を仮想環境で体験できることが、VRを利用するメリットのひとつです。
・デザインや空間を検討する
VRは、完成した空間を見るだけでなく、デザインを検討するためにも活用できます。
建築やインテリアでは、3DモデルをVRで確認することで、PCモニター上では気づきにくかった空間の大きさや視線、家具や設備の配置などを確認できます。
また、設計者だけでなくクライアントやプロジェクトメンバーと空間イメージを共有し、デザインについて話し合う用途にも利用できます。
・離れた場所から同じ仮想空間を共有する
VRでは、離れた場所にいる複数のユーザーが同じ仮想空間に参加できるサービスもあります。
建築・建設分野では、設計者やクライアント、プロジェクトメンバーなどが同じ3Dモデルを確認しながら、デザインレビューや打ち合わせを行うといった活用ができます。
実際の建物や模型の前に全員が集まらなくても、仮想空間を共有しながらコミュニケーションできることもVRの特徴です。
VRは「見る」だけでなく「体験する」技術
VRは、3D画像や映像を見るだけの技術ではありません。
ユーザーの頭や体の動きを仮想空間に反映したり、コントローラーやハンドトラッキングで操作したりすることで、コンピューターで作られた空間を体験できます。
さらに、触った感覚を伝えるハプティクスなど、視覚や聴覚以外の感覚を取り入れる技術も開発・活用されています。
特に建築・インテリア分野では、完成前の空間を体験したり、設計内容を確認したり、クライアントとイメージを共有したりするなど、通常の図面や建築パースとは異なる方法でデザインを確認できることがVRの大きな特徴です。
VRゴーグルとは?

VRゴーグル(VRヘッドセット)とは、頭部に装着してVR(バーチャルリアリティ)を体験するためのデバイスです。
左右の目に映像を表示し、頭の向きや位置に合わせて仮想空間の視点を変化させることで、その空間の中にいるような感覚でVRコンテンツを体験できます。
現在のVRゴーグルには、ディスプレイやレンズだけでなく、ユーザーや周囲の空間を認識するカメラやセンサー、スピーカーなど、さまざまな機能が搭載されています。
また、PCを使わず単体で動作するモデルや、高性能なPCと接続してVRコンテンツを利用できるモデルなどがあり、用途に合わせて選ぶことができます。
VRゴーグルの基本的な機能

VRゴーグルには、仮想空間を体験するためのさまざまな機能が搭載されています。
・ディスプレイとレンズ
VRゴーグルでは、左右の目に映像を表示し、レンズを通して見ることで立体的な空間を表現します。
ディスプレイの解像度やレンズの種類などは製品によって異なり、映像の見え方や装着時の体験にも影響します。
・トラッキング
VRゴーグルに搭載されたカメラやセンサーなどを使って、ユーザーの頭や体の動きを検知します。
現在の主要なVRゴーグルでは、回転だけでなく前後・左右・上下への移動も検知できる6DoFに対応した製品が多く、ユーザーの動きを仮想空間へ反映できます。
・パススルー
パススルーとは、VRゴーグルに搭載されたカメラを使って、装着したまま周囲の現実空間を確認できる機能です。
カラー映像で周囲を確認できる製品もあり、現実空間にデジタルコンテンツを重ねるMR(Mixed Reality:複合現実)にも利用されています。
・アイトラッキング
一部のVR・MRヘッドセットには、ユーザーの視線を検知するアイトラッキングが搭載されています。
視線による操作や、ユーザーが見ている部分を把握する用途などに利用できます。
ただし、すべてのVRゴーグルに搭載されている機能ではないため、必要な場合は製品ごとに対応状況を確認しましょう。
・コントローラー・ハンドトラッキング
多くのVRゴーグルでは、専用コントローラーを使って仮想空間を操作できます。
また、対応する製品では、ヘッドセットのカメラで手の位置や動きを認識するハンドトラッキングを利用し、コントローラーを持たずに操作することもできます。
VRゴーグルの主なタイプ
現在のVRゴーグルは、大きく「スタンドアロン型」と「PC接続型」に分けて考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、スタンドアロン型として単体で使用しながら、必要に応じてPCへ接続できる製品もあります。
タイプ | 特徴 | メリット | 代表的な製品 | 向いている用途 |
スタンドアロン型 | ヘッドセット単体でVRを利用できる | PCを用意せず使用でき、ケーブルに制限されにくい | VRを手軽に導入したい場合、ゲーム、VR体験、対応する建築・設計レビュー | |
PC接続型・PC VR対応 | PCと接続してVRコンテンツを利用する | PC側の処理能力を利用したVRコンテンツに対応できる | PC VR、3DCG・VRコンテンツ、用途に応じた高品質なビジュアライゼーション | |
スタンドアロン+PC対応 | 単体でも使用でき、必要に応じてPCとも接続できる | 用途によってスタンドアロンとPC VRを使い分けられる | VRを複数の用途で使用したい場合 |
以前は、スマートフォンをゴーグルに装着して使用するGoogle Cardboardなどの「スマートフォン利用型」もVRを手軽に体験する方法として広く利用されていました。
現在は、ディスプレイやプロセッサーを搭載したスタンドアロン型のVR・MRヘッドセットが普及しているため、新しくVRゴーグルを選ぶ場合は、まずスタンドアロン型やPC VR対応製品から検討するとよいでしょう。
代表的なVR・MRヘッドセット
2026年現在、VR・MRを体験できるヘッドセットにはさまざまな製品があります。
Meta Quest 3・Meta Quest 3S
Meta Quest 3シリーズは、PCを使用せずヘッドセット単体でVR・MRコンテンツを利用できるスタンドアロン型のヘッドセットです。
ゲームやエンターテインメントだけでなく、対応するアプリを利用したさまざまなVR・MR体験に使用できます。
建築分野では、Autodeskの「Workshop XR」がMeta Quest 2、Quest 3、Quest 3S、Quest Proに対応しており、建築やBIMの3DモデルをVR空間で確認する設計レビューにも利用できます。
PICO 4 Ultra
PICO 4 Ultraは、VRだけでなくMRにも対応したスタンドアロン型のヘッドセットです。
片目2160×2160ピクセルのディスプレイやカラーシースルーカメラ、深度センサーカメラなどを搭載しています。
企業向けには「PICO 4 Ultra Enterprise」も提供されており、Business Suiteやデバイス管理など、法人での運用を想定した機能が用意されています。
VIVE Focus Vision
HTCのVIVE Focus Visionは、スタンドアロンとPC VRの両方に対応したヘッドセットです。
片目2448×2448ピクセルのディスプレイ、最大120度の視野角、カラーのパススルーカメラ、深度センサー、アイトラッキングなどを搭載しています。
単体で利用するだけでなく、対応するPCと接続してPC VRコンテンツを利用できることが特徴です。
Apple Vision Pro
Apple Vision Proは、Appleが「空間コンピュータ」と位置付けているヘッドセットです。
2025年にはM5チップを搭載したモデルが登場し、2,300万ピクセルのマイクロOLEDディスプレイ、アイトラッキングカメラ、TrueDepthカメラ、LiDARスキャナなどを搭載しています。
一般的なVRゲーム専用機とは位置付けが異なり、現実空間とデジタルコンテンツを組み合わせた空間コンピューティングを中心とした製品です。
VRゴーグルを選ぶときのポイント

VRゴーグルは、解像度などの数字だけで比較するのではなく、「何に使うのか」を考えて選ぶことが大切です。
使用したいVRアプリに対応しているか
最初に確認したいのが、使用したいVRアプリやソフトウェアに対応しているかどうかです。
VRゴーグルによって対応するOSやプラットフォームが異なるため、使用したいアプリが決まっている場合は、先に公式サイトで対応機種を確認しましょう。
建築・設計用途でも同様です。たとえばAutodesk Workshop XRをVRで使用する場合、2026年9月現在、Meta Quest 2、Quest 3、Quest 3S、Quest Proが公式対応機種となっています。
スタンドアロンで使用するか、PCと接続するか
PCを使用せずVRを体験したい場合は、スタンドアロン型が候補になります。
一方、PC向けのVRソフトウェアや3DCGコンテンツを利用する場合は、PC VRへの対応状況に加えて、PC側のCPUやGPU、メモリ、接続端子などの動作環境も確認する必要があります。
解像度
解像度は、VRゴーグルの映像の細かさを判断するための要素のひとつです。
ただし、「4K」という表記だけでは、両目を合わせた解像度なのか、片目あたりの解像度なのか判断しにくい場合があります。
製品を比較するときは、「片目あたりの解像度」など、メーカーが公開している仕様を確認するとわかりやすいでしょう。
リフレッシュレート
リフレッシュレートは、ディスプレイが1秒間に画面を書き換える回数を表します。
対応するリフレッシュレートは製品によって異なります。たとえばPICO 4 Ultraは90Hz、VIVE Focus VisionはDisplayPortモードで120Hzに対応しています。
単純に「90Hz以上ならよい」と判断するのではなく、使用するコンテンツや動作モードを含めて確認しましょう。
視野角(FOV)
FOV(Field of View:視野角)は、ヘッドセットを装着したときに見える範囲を表します。
こちらも製品によって異なり、PICO 4 Ultraは105度、VIVE Focus Visionは最大120度と公表されています。
視野角だけでVR体験の品質が決まるわけではないため、解像度やレンズ、装着感などとあわせて比較することが大切です。
トラッキング機能
現在のスタンドアロン型VR・MRヘッドセットでは、ヘッドセットに搭載されたカメラやセンサーを利用して周囲やユーザーの動きを認識する「インサイドアウトトラッキング」が採用されています。
外部にベースステーションなどを設置せず利用できる製品も多いため、導入方法や必要なスペースも確認しておきましょう。
装着感
VRゴーグルは頭に装着して使用するため、重量だけでなく、前後の重量バランス、ストラップ、フェイスクッション、眼鏡への対応、瞳孔間距離(IPD)の調整なども重要です。
特に建築の設計レビューやプレゼンテーションなどで長時間使用する場合は、スペックだけでなく実際の装着感も確認して選ぶとよいでしょう。
パススルーやMR機能
現在のVRヘッドセットでは、カメラを通して現実空間を確認できるカラーパススルーや、現実空間とデジタルコンテンツを組み合わせるMR機能を搭載した製品もあります。
VRだけを利用したいのか、MRも活用したいのかによって、必要なカメラやセンサーなども変わります。
建築用途では「対応ソフト」から選ぶことも重要
建築・内装デザインでVRゴーグルを使用する場合は、本体のスペックだけでなく、使用する建築・BIM・VRソフトウェアがどのヘッドセットに対応しているかを確認することが重要です。
たとえばAutodesk Workshop XRでは、BIMや建築の3Dモデルを人間のスケールに近い感覚で確認しながら、複数のユーザーで設計レビューを行えます。
このような建築向けサービスを利用する場合は、「高解像度だから」「価格が安いから」という理由だけでVRゴーグルを選ぶのではなく、使用するソフトウェアの公式対応機種を確認してから選びましょう。
VRとARの違い

VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)とAR(Augmented Reality:拡張現実)は、どちらもデジタル技術を使って現実とは異なる情報や空間を体験するための技術です。
大きな違いは、VRは仮想空間を中心に体験するのに対して、ARは現実世界を見ながら、その上にデジタル情報を重ねて利用する点にあります。
建築・内装分野でも両方の技術が活用されていますが、向いている用途は異なります。
基本的な違いは「仮想空間に入る」か「現実空間に重ねる」か
VRでは、VRゴーグルなどを装着し、コンピューターで作られた仮想空間を中心に体験します。
たとえば、完成前の住宅やオフィスの3DモデルをVRで表示すると、ユーザーは建物の中に入ったような視点で周囲を見渡すことができます。
建築では、完成前の空間を体験したり、設計レビューを行ったり、クライアントに完成イメージを伝えたりする用途に活用できます。
一方、ARは現実世界を見ながら、その上に3Dモデルや文字、画像などのデジタル情報を重ねて表示する技術です。
スマートフォンやタブレット、対応するヘッドセットなどを利用し、実際の部屋に家具の3Dモデルを表示したり、建設予定地に建物の完成イメージを重ねたりすることができます。
つまり、VRは「仮想空間を体験する」、ARは「現実空間にデジタル情報を追加する」と考えると違いを理解しやすいでしょう。
特徴 | VR(バーチャルリアリティ) | AR(拡張現実) |
基本的な考え方 | 仮想空間を中心に体験する | 現実空間にデジタル情報を重ねる |
現実世界の見え方 | 仮想空間が視界の中心になる | 現実世界を見ながら利用する |
主なデバイス | VR・MRヘッドセット | スマートフォン、タブレット、AR・MR対応デバイス |
表示するもの | 3Dの仮想空間やコンテンツ | 現実空間に重ねた3Dモデル、画像、文字など |
建築での主な用途 | 完成前の建物の体験、設計レビュー、プレゼンテーション | 家具や建物の配置確認、現場での情報表示、完成イメージの重ね合わせ |
向いている場面 | 空間全体を体験したい場合 | 実際の場所とデジタル情報を比較したい場合 |
建築でVRを使う場合
建築分野でVRを使用すると、設計した建物や室内を仮想空間として体験できます。
たとえば、BIMや3DCGで作成した建物をVRで表示し、室内を歩くような視点で確認することで、図面や通常の建築パースでは把握しにくい空間の広さ、高さ、視線、家具や設備の配置などを確認できます。
複数のユーザーが同じ仮想空間に入り、設計内容について話し合うことができるサービスもあります。
そのため、VRは完成前の空間を体験したり、設計レビューやクライアント向けのプレゼンテーションを行ったりする用途に向いています。
建築でARを使う場合
ARでは、実際の建物や敷地、室内を見ながら、そこに3Dモデルや情報を重ねて確認できます。
たとえば、実際の部屋に家具や設備の3Dモデルを表示して配置を検討したり、建設予定地に建物の完成イメージを重ねたりすることができます。現実の空間とデジタルモデルを同時に確認できるため、実際の場所との位置関係や大きさを確認したい場合に活用できます。
また、建設現場では、現実の空間に設計情報などを重ねて確認する用途もあります。
VRとARの中間にある「MR」とは?
現在のVR・AR関連機器では、「MR(Mixed Reality:複合現実)」という言葉もよく使われています。
MRは、現実世界とデジタル世界を組み合わせて体験する技術です。
たとえば、ヘッドセットのカメラを通して実際の部屋を見ながら、その空間に3Dオブジェクトを配置したり、現実の壁や床の位置を認識してデジタルコンテンツを表示したりできます。
現在のMeta QuestシリーズやApple Vision Proなど、VRと現実空間の両方を扱えるデバイスも登場しているため、「VR用」「AR用」と完全に分かれているとは限りません。
VR、AR、MRはそれぞれ独立した技術として説明されることもありますが、現実世界と完全な仮想空間の間にさまざまな体験が存在すると考えると理解しやすいでしょう。
VRとARはどちらを選べばいい?
建築・内装デザインでVRとARのどちらを使うかは、目的によって変わります。
完成前の建物や室内の中に入ったような感覚で空間全体を確認したい場合は、VRが向いています。
一方、実際の部屋や敷地を見ながら、家具や建物、設備などを重ねて確認したい場合は、ARが適しています。
どちらが優れているというものではなく、「仮想空間そのものを体験したいのか」「現実空間とデジタル情報を組み合わせたいのか」を基準に選ぶとわかりやすいでしょう。
建築・建設分野におけるVRの活用事例

VRは、建築・建設分野でもさまざまな場面で活用されています。
建物の3DモデルをVR空間で確認することで、図面や通常の建築パースとは異なり、実際に建物の中に入ったような視点から空間を確認できます。
現在では、完成イメージを伝えるためだけでなく、設計レビュー、BIMモデルの確認、クライアントへのプレゼンテーション、施工前の安全確認などにも利用されています。
設計レビュー|完成前の建物をVR空間で確認する
建築分野における代表的なVR活用方法のひとつが、設計レビューです。
BIMや3DCGで作成した建物をVR空間で表示すると、ユーザーは建物の中を歩くような視点から設計内容を確認できます。
PCモニター上で3Dモデルを見る場合とは異なり、人間に近いスケールで空間を体験できるため、部屋の広さや天井の高さ、設備の位置、通路の幅、視線などを確認する用途に活用できます。
たとえば「Autodesk Workshop XR」は、Autodesk Forma上の3Dモデルや関連データをVR空間で確認できるAEC向けの設計レビュー・コラボレーションツールです。
RevitやNavisworksなどのプロジェクトをAutodesk Forma経由でVRに接続し、建物の中を移動しながらBIMデータを確認したり、計測したり、問題箇所を登録したりできます。
複数のユーザーで同じモデルを確認することもできるため、設計者だけでなく、BIM担当者やエンジニアなどが空間を共有しながら設計レビューを行えます。
クライアントへのプレゼンテーション|完成イメージを体験してもらう
VRは、建築・インテリアデザインのプレゼンテーションにも活用できます。
通常の建築パースでは、あらかじめ設定されたカメラアングルから完成イメージを確認します。
一方、VRではユーザー自身が周囲を見渡したり、建物の中を移動したりできるため、完成前の建物をより空間的に確認できます。
たとえば住宅や店舗、ホテル、オフィスなどの提案時にVRを利用すれば、クライアントが室内を体験しながら、空間の広さやデザイン、素材、家具の配置などを確認できます。
設計者にとっても、図面や3Dモデルの操作に慣れていないクライアントと空間イメージを共有するための方法のひとつになります。
不動産・住宅販売|完成前の物件を3Dで内覧する
建築と不動産を組み合わせた分野でも、VRや3Dによるバーチャル内覧が利用されています。
まだ完成していないマンションや住宅の場合、購入検討者が実際の室内を見ることはできません。
そこで、設計データなどをもとに3DCGで室内を再現し、完成前の空間を仮想的に確認できるサービスが利用されています。
こうしたサービスでは、部屋の中を移動しながら間取りや空間の広がりを確認したり、家具を配置して生活イメージを検討したりできます。
建築パースや図面だけではイメージしにくい空間を、より立体的に伝えるための方法として活用されています。
BIMモデルの確認|空間上の問題を施工前に確認する
VRは、完成イメージを見るだけでなく、BIMモデルを確認するためにも利用できます。
建物を人間に近いスケールで確認することで、通常のPC画面では気づきにくい空間上の問題を発見できる場合があります。
たとえば、設備の位置、作業スペース、通路、天井周辺の設備などをVR空間から確認し、施工前に問題点を検討できます。
Autodesk Workshop XRでは、BIMデータを確認しながら壁や天井などのカテゴリー表示を切り替えたり、空間内で計測したり、発見した問題を指摘事項として登録したりできます。
VRで見つけた問題を設計・BIMのワークフローへ戻して修正することで、VRを単なる「完成イメージを見るためのツール」ではなく、設計レビューの一部として利用できます。
施工計画・安全確認|工事が始まる前に現場を体験する
建設分野では、施工前の計画や安全確認にもVRが活用されています。
実際の建設現場では、高所作業、重機、資材、作業員の動線など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
VRを利用すると、実際の現場で危険な状況を再現することなく、仮想空間で作業環境や動線を確認できます。
オランダの建設会社Dura Vermeerでは、Autodesk Workshop XRと4Dモデルを利用した「バーチャル安全ウォーク」を実施しています。モデル内に重機、仮設設備、歩行ルート、安全区域、作業区域などを再現し、施工担当者や安全担当者がVR空間を歩きながら、実際に施工する前に危険になりそうな場所を確認しています。
VRは建物の完成後を確認するだけでなく、「どのように施工するか」「安全に作業できるか」を検討する用途にも利用されています。
遠隔での設計レビュー|離れた場所から同じモデルを確認する
VRやXRを利用した設計レビューでは、離れた場所にいるメンバーが同じ3Dモデルを共有することもできます。
設計者、BIM担当者、エンジニア、施工担当者などが同じ仮想空間に参加し、建物を確認しながら意見を交換できます。
Autodesk Workshop XRでは、VRヘッドセットだけでなくWebブラウザから共同レビューへ参加することもできます。そのため、全員がVRゴーグルを用意しなくても、VRを利用するメンバーとPCから参加するメンバーが同じ設計レビューに参加できます。
離れた拠点や異なる職種のメンバーが同じ建築モデルを確認できることも、建築・建設分野におけるVR活用のひとつです。
VRは建築パースとは異なる方法で空間を確認できる
建築パースは、建物のデザインや完成イメージを一枚の画像として伝えることに適しています。
一方、VRではユーザー自身が視点を動かし、仮想空間の中から建物を確認できます。
そのため、建築パースとVRはどちらか一方を選ぶものではなく、目的に応じて使い分けることができます。
デザインや雰囲気をわかりやすく伝えたい場合は建築パース、空間の広さや視線、設備の位置などを体験しながら確認したい場合はVRというように、それぞれの特徴を活かすことがポイントです。
また、BIMや3DCGで作成した建物をVRへ展開することで、設計レビューやプレゼンテーション、施工計画など、ひとつの3Dモデルをさまざまな工程で活用することもできます。
まとめ

VR(バーチャルリアリティ)は、コンピューターで作られた仮想空間を、実際にその場にいるような感覚で体験できる技術です。
建築・建設分野では、BIMや3DCGで作成した建物をVR空間で確認し、完成前の建物を体験したり、設計レビューを行ったりする用途に活用されています。
通常の図面や建築パースでは、決められた視点から建物や室内を確認します。一方、VRではユーザー自身が周囲を見渡したり、建物の中を移動したりできるため、空間の広さや高さ、視線、設備の位置などを体験しながら確認できることが特徴です。
また、VRは完成イメージを確認するだけでなく、BIMモデルの確認、クライアントへのプレゼンテーション、施工前の問題点の確認、遠隔での設計レビューなどにも利用されています。
ARやMRと組み合わせた技術も広がっており、現実空間と3Dモデルを重ねたり、現実と仮想空間を行き来しながら設計内容を確認したりすることもできるようになっています。
建築・内装デザインでVRを導入する場合は、VRゴーグルの解像度や価格だけでなく、使用したいBIM・3DCG・VRソフトウェアに対応しているかを確認することも重要です。
建築パース、BIM、VRにはそれぞれ異なる特徴があります。デザインや完成イメージを画像として伝える場合は建築パース、設計情報を管理する場合はBIM、完成前の空間を体験したり設計内容を空間的に確認したりする場合はVRというように、目的に合わせて使い分けるとよいでしょう。
VRは、建築パースやBIMに代わるものではなく、それらの3Dデータを活用しながら、建物を「見る」だけでなく「体験する」ための選択肢のひとつです。建築・建設における設計確認やプレゼンテーションの方法として、目的に合わせて活用してみてください。











