建築デザインにおいて、美しさや機能性は言うまでもなく、その魅力を最大限に引き出す手段が重要です。
建物をリアルに描き出し、プロジェクトのポテンシャルを最大限に引き立てるために、3DCGを利用した建築パースが欠かせません。
しかし、どのようなアングルを選び、どのようにカメラを配置するかは、ある程度の技術が必要になってきます。
この記事では、建築パースを制作する際に役立つ基本的なアングルの決め方について解説します。
プロの建築CGアーティストがどのようにして建物を魅力的に見せるか、初心者にも分かりやすくお伝えします。
1. アングルの決定
CGパースを描き始める際、ますます最初に考えるのはアングルの決定です。
理由は大きく5つあります。
理由1:伝えたいことを効果的に伝える
パース制作は、「見せたいもの」や「伝えたいこと」を視覚的に表現するプロセスです。
感情やメッセージを効果的に伝え、印象深いパースを制作するためには、目的を明確にし、その根拠に基づいてアングルを選択することが欠かせません。
理由2:修正による負担軽減と納期の遅延回避
アングルを適当に決定すると、後から物足りなさを感じる可能性があり、その修正には手間と時間がかかります。
最初からクリアなアングルを持っていれば、数多くの住宅プロジェクトで実証されているように、無駄なコストや時間の浪費を防げます。
理由3:視覚的な効果の演出
アングルの選択は、建物や景観の特定の特徴を引き立てたり、特定の雰囲気を演出する手段として活用されます。
たとえば、商業施設のパースでは、周辺の環境との調和を考慮して、地上から見上げるアングルを選ぶことで、ショッピングエリアの魅力が強調されます。
理由4:環境との調和
建築物は周囲の環境と調和する必要があります。
アングルの選定を通じて、都市部の再開発プロジェクトでは、街並みとの調和を考慮し、プロジェクト全体に一体感が生まれました。
理由5:空間のストーリーとユーザーエクスペリエンス
アングルは建物や空間のストーリーを伝える重要な要素です。
たとえば、最近の住宅複合施設のパースでは、視点の変化を通じて居住空間や共用施設の利便性を強調し、将来の住民に向けた魅力的なエクスペリエンスを提供しています。
2. 基本的なアングル3種
目的によって、アングルは異なります。
以下で、基本的な3種のアングルについて説明します。
1. ローアングル
ローアングルは、被写体を下から撮影するアングルです。
被写体を力強く、迫力のあるものとして捉えます。
建築物や人物を下から見上げることで、高さや存在感を引き立て、ダイナミックな印象を与えます。
特に、高い建築物や力強いキャラクター、自然の風景など、威厳や迫力を表現したいシーンにおすすめです。
2. ハイアングル
ハイアングルは、被写体を上から撮影するアングルであり、通常の視点よりも高い位置から見下ろすスタイルです。
全体的な景観や配置を捉えるのに適しており、広範囲な情報を提供します。
建築物やイベント、群衆の動きなど、全体の構成や関係性を強調したい場合に利用されます。
ハイアングルは視点の高さによって、視聴者に広い視野を提供し、物事の全体像を理解させる効果があります。
3. 水平アングル
水平アングルは、被写体と水平なラインを保ちながら撮影するスタイルです。
一般的な視点に近く、安定感や均衡感を生み出します。建築物や風景、人物など、被写体を客観的に捉え、状況を客観的かつバランスよく伝えるのに適しています。
水平アングルは普遍的で使い勝手がよく、幅広いシーンで活用されます。特に、日常の風景や静止した被写体に適しています。
これらのアングルは、それぞれ異なる視点から被写体を捉えるため、表現したい要素や伝えたいメッセージに合わせて使い分けることが重要です。
ローアングルは迫力や力強さを、ハイアングルは全体像や配置を、水平アングルは客観的でバランスのとれた視点を提供します。
3.建築パースにおける焦点距離の重要性
焦点距離(Focal Length)は、3DCGを利用した建築パースにおいても極めて重要です。
例えば、人間の目の視界にもっとも近いとされている焦点距離は約40〜50mmであり、この焦点距離を使用することで建築物を自然でリアルな視点から捉えることができます。
短い焦点距離(例:25mm)を採用すると、広い視野が得られ、建物全体を包括的に表現することが可能です。
広い景色や大規模なプロジェクトを表示する際に有益です。
一方で、長い焦点距離(例:80mm)を使用すると、被写体が引き締まり、背景がぼけやすくなります。
ディテールを強調したい場合や、特定の要素を際立たせたい場面で効果的です。
選択する焦点距離は、建築パースの見た目や伝えたいメッセージに深い影響を与えます。
デザインの強調や立体感の表現、現実感の向上において、正確な焦点距離の選定が不可欠です。
建築パース制作において、焦点距離を意識することで、臨場感あふれるリアリティのある作品を生み出すことができます。
4. 遠近法の活かし方
建築パースにおいて遠近法は奥行きや立体感を表現するための重要な要素です。
平行線や要素を遠くに行くほど収束するように配置し、収束点や対角線を利用して奥行きを際立たせます。
要素のスケール感や配置にも注意し、透視図法や色・明暗の工夫を組み合わせて遠近感を強調します。
遠近法を活かすことで、建築パースに立体感や奥行きを与え、リアルで迫力のある表現を実現することができます。
5. 三分割構図
三分割構図は、画面を水平または垂直に三等分して要素を配置するデザイン手法です。
水平と垂直のラインを利用し、主要な要素を三等分されたエリアに配置することで、バランスの取れた構図が生まれます。
この手法は重要な要素の強調や対比を容易にし、視線を自然に誘導する特長があります。
また、物語性を強化したい場合にも適しており、見やすく魅力的な構図を構築する際に活用されます。
6. 光の取り入れ方
光の取り入れ方は建築設計において極めて重要で、建物の外観や内部空間の雰囲気に大きな影響を与えます。
南向きに配置された窓や適切な遮光デバイスの導入、反射と拡散に配慮した素材の選定、中庭や吹き抜けの活用、そして光の温度と色彩の調整などが重要です。
周囲の環境と調和しつつ、心地よい明るさや雰囲気を建築物内外に演出することができます。
7. まとめ
建築パース制作において、アングルの選定や焦点距離、遠近法、光の取り入れ方はプロジェクトに独自の魅力を与えるカギとなります。
本記事を元に、これらの要素を検討し、建築パース制作においてプロジェクトの魅力を最大限に引き出し、成功に導いてください。